こんにちは!NTTドコモ 6Gテック部 無線標準化担当3年目社員の平野です!
私は3GPP (3rd Generation Partnership Project)標準化会合に参加し、5Gネットワーク/端末に関する世界共通のルール作りを進めています 。
今回は会合でどんなことをしているかや、2025年5月にマルタで開催された会合に参加した私の体験談をお伝えします。3GPP標準化会合が「何か」や「どんなことをするか」はこちらの記事などで詳しく紹介されているので、今回は3年目社員の私が行っていることや私自身の思いや考えにフォーカスして紹介します。
3GPP・RAN1とは
3GPPでは、世界中のオペレーター・端末ベンダ・ネットワークベンダなどが集まり、スマホなどの端末がセルラ通信を行えるように定めるべき世界共通のルール(標準仕様)を作ります。世界共通の仕様を作ることで、端末が世界中どこでも通信ができるようになります。
私はその中でRAN1と呼ばれる議論グループに参加しています。RAN(Radio Access Network)とは端末と基地局間の通信にかかわる部分で、RAN1では端末と基地局間の無線通信における物理層に関する議論を行います。
RAN1の中でもさまざまな技術トピックに関する議論が並行して行われており 、私は端末の省電力技術に関するトピックを担当しています。
5月会合の自分の中での位置づけ
私は、2024年2月のアテネで開催された会合にはじめて現地参加し、2025年5月のマルタで開催された会合まで継続して計9回の会合に現地参加をしました。
RAN1では1つの標準仕様に関する議論の期間をReleaseと呼ぶのですが、実は最初に会合参加したアテネの会合がReleaseの開始タイミングで、2025年5月のマルタでの会合がReleaseの完了タイミングでした。
そのため、1つの標準仕様に関する議論会合に、最初から最後までかかわってきたことになります。自分がかかわってきた議論の集大成ということもあり、特に思い入れが強い会合となりました。
会合直前の仕事・5月会合直前の体験談
RAN1では、会合開始の1週間前に各社が主張したい内容を「寄書」と呼ばれる文書にまとめ、公開します。

私が担当するトピックの寄書は、基本的には各議論ポイント(例:通信モジュールにおいてスリープ状態からの「復帰タイミングはいつが最適か」もしくは「復帰のきっかけとするのになにが最適か」 )に対して技術検討(例:メリット・デメリットを分析し、どのような方式がよいかを判断する)し、自社の意見を書きます。前述のとおり世界の標準機能に関する仕事なので、寄書や議論はすべて英語になります。
また、会合開始までの1週間の間に他社の寄書を読み、各議論ポイントに対する他社の意見をまとめます。それをもとに再度自社の主張したい内容を検討します。これを「寄書レビュー」などと言います。スケジュールを図で表すと下記になります。

初期参加時(2024年2月)よりも多数側になっていた提案の割合が高かったので、Releaseを通して自分の成長を感じました。
会合中の仕事・5月会合での体験談
会合中、RAN1ではFeature lead(FL)と呼ばれる人が会合でのトピックの議論を先導します。FLは各社から出された寄書をもとに、議論の場で提案する内容をまとめた文書(FLサマリ)を作成します。
議論の場でその提案に対する意見が挙手制で各社から出されます。その場でコンセンサスが取れればその提案が合意となります。合意の内容に沿って標準仕様が作られるので、その内容は重要になります。
5月会合でも、私はFLサマリの確認と議論参加を行いました。FLサマリは議論の度に更新されるのですが、議論が進むにつれ各社の主張に基づいて妥協点を探りながら提案が更新されていくので、FLの提案の意図が分からなくなってしまうこともあります。
そういった時は、空き時間にFLを探し、提案の意図を確認していました。これも初期と比べてより積極的にできていることを実感しています。
議論の場では、他社の意見を聞いて、それでも自社の提案が妥当だと思った場合は、自社で主張していた内容になるように発言しました。また、前述のとおり今回がRelease最後の会合ということもあり、少しでも疑問に思った内容は質問することで、懸念がないようにしました。
初期との心境の違い
初期はトピックに関する知識や英語能力がまだ十分ではなかったため、議論に追いつくのがやっとで積極的な議論参加はできていませんでした。しかし、Releaseを通して知識や英語能力も向上していき、議論にもより積極的な参加ができるようになりました。
また、知識が身につき端末やネットワークの全体像がより分かったことで、実際の運用をイメージしながら技術検討や会合参加ができるようになったとも思います。特にドコモのようなオペレータ観点では、実際の運用をイメージすることは重要だと考えています。
端末やネットワークの全体像を見たときに足りていない部分を把握し、それを検討に組み込めるようになったことは私の大きな成長だと考えています。
標準化の魅力
私が思う標準化の魅力は大きく2つあります。
1つ目は、世の中に与える影響が大きいことです。入社3年目の私でもドコモの代表として会合に参加し、世界中から集まった企業と議論ができること・世界標準の通信規格策定に携わることで、世界中の無線通信を利用するお客さまに自分たちが考えた技術を使ってもらえることは、非常に大きな魅力だと思います。
2つ目は、大きく成長できる場であることです。実は、大学時代は通信や情報とは全く関係ない分野を専門にしていました。そんな私でも入社から1年経たない期間で無線通信の知識を身に着け、会合に参加させてもらえることは凄いことだと思っています。
また、会合直前の技術検討を通して、技術検討能力や無線通信に関する知識を身に着け、会合でリアルに議論に参加することで、英語能力や議論する力を身に着けることができたと考えています。私自身、標準化の仕事を通して大きく成長できたと実感しています。
まとめ
今回は、3GPP標準化会合において3年目社員の私が行っていることや私自身の思いや考えについて紹介しました。この記事を読んで、少しでも標準化の仕事に興味を持っていただければ幸いです!