NTTドコモR&Dの技術ブログです。

【5Gの仕様凍結に向けて】3GPP CT1#156会合を紹介!

こんにちは。ドコモ 6Gテック部の林 悠眞(はやし ゆうしん)です。

今回は、2025年8月25日から29日にスウェーデン・ヨーテボリで開催された3GPP CT1#156会合の模様をお伝えします。

まず3GPPにおけるCTの役割については下記の記事でご紹介しております。ぜひご確認ください。

nttdocomo-developers.jp

CT1とは

CTグループ内に属するCT1の主な目的は、ユーザー機器 (UE) からコアネットワークへのインターフェースおよびコアネットワーク内のインターフェースのプロトコルを決定するなど、詳細仕様の作成やその拡張を行うことです。

各グループがそれぞれの会場で議論を実施

CT1#156会合の主な議題

今回のCT1#156会合は、5G-Advancedの機能拡張について議論しているRelease19の仕様凍結に向けての検討がメインテーマでした(Release 20から6Gの議論がはじまります)。各国の通信キャリア、端末ベンダ、NW機器ベンダ、チップセットベンダ、モバイル通信にかかわる研究機関が集い、活発な技術議論を繰り広げました。会合で取扱われた主なトピックは以下のとおりです。

AIoT(Ambient IoT)

AIoTとは周囲に存在する環境エネルギー(たとえば電波、光、運動、熱エネルギーなどが該当)を電力源とすることができる、新たな可能性を秘めたIoTデバイスのことです。主な議論内容として、無線インターフェイス アーキテクチャとプロトコルの仕様について議論しているグループ(RAN2)からCT1向けに提示された、AIoT端末からネットワークへ信号を返答する際にAIoT端末の能力の低さによって応答タイミングが遅れてしまい、既存の手順では応答できなくなる課題について議論が行われました。その結果、アーキテクチャや情報フローについて議論しているグループ (SA2) の議論(新規情報フローの追加)が必要という結論となり、RAN2に対して課題解決にはSA2での対応が必要である旨を回答しました。

PWS over Satellite

人工衛星を利用した移動体通信におけるPWS(Public Warning System)の仕様に関する議論が実施されました。PWSとは災害時などにネットワークから災害範囲に緊急情報を配信するシステムです。議論内容は、仕様書上で過去のReleaseの衛星対応端末にさかのぼってPWS適用を認めるべきかというものでした。過去のReleaseに対して手を加えることによる後方互換性に関する課題点の明確化が十分ではないという結論に至り、今後の会合で再度議論という整理となりました。

AI/ML(Artificial Intelligence / Machine Learning)

AI/MLは、モバイルネットワーク内のアプリケーションサーバでMLによる推論等を実行しそのアウトプットをクライアントであるUEが受け取るようなサービスのための、サーバとクライアント間のやり取りの仕様に関する議題です。今回の会合では、アプリケーションサーバとの通信やミッションクリティカルなサービスを実現するグループ(SA6)で検討されたアーキテクチャに基づき、UEからAIシステムへの登録手順、UEからモバイルネットワークでMLを実行する際の手順に関する情報フローの仕様について議論が実施されました。議論内容は情報フローに関係する通信プロトコルの調整が主なポイントとなりました。議論参加者の方向性はおおむね一致していたため、比較的スムーズに議論が収束しました。

NG-RTC

NG-RTC(Next Generation Real Time Communication)ではその名のとおり、次世代のリアルタイムな音声通信システムの仕様に関する議論が実施されました。議論内容は、3rd Party(通信キャリアネットワークの外からサービスを提供する企業や団体)とUE・コアネットワーク間の認証・認可の信号プロトコルに関するものでした。しかし、認証・認可に必要となる情報フローの詳細がSA6で検討されていなかったため、CT1の対応ができない状況となり、SA6での詳細決定後に再度CT1で議論という整理になりました。

おわりに

今回のCT1#156会合は、1000件を超える提案文書が提出され、それらをもとに各社の検討状況や新規アイデアに対して意見交換や技術議論が行われました。

今後は、10月にフランスで開催される次回CT1会合でCTグループにおける6Gに関する議論が開始される予定です。ドコモの考える6Gビジョンの実現に向けて6Gのモバイル通信技術仕様の議論に積極的に参加し、モバイル通信業界の発展に貢献していきます。

今後もモバイル技術の最前線をキャッチアップしつつ、みなさまに最新の情報をお伝えしていきますので、ご期待ください。

以上、次回のCT1#157会合レポートもお楽しみに。

P.S.

下記Webページに私の写真がのりました!右から2番目です(笑)

www.3gpp.org