はじめに
はじめまして!NTTドコモ 第一プロダクトデザイン部の伊藤です。
普段の業務では人材育成担当として、組織の生産性向上を推進するために、ノーコード・ローコードツールやAIなどのデジタルツールを活用した業務改革支援や、ツール勉強会を行っています。
この記事では、「社員同士が互いの活躍を称賛し合う文化を作りたい」という想いから生まれた「活躍事例ダッシュボード」をご紹介します。Power BIを使った技術的な実装だけでなく、取り組みの背景にあった想いと組織に生まれた嬉しい変化まで、その舞台裏をお話しします。
取り組みの全体像
今回ご紹介するのは、社員の社内外の活躍をSharePointで収集し、Power BIでダッシュボード化して組織全体で共有する取り組みです。社員が社外講演、社内講演、メディア掲載などの活動を行った際に、本人がSharePointリストに事例を登録し、それをPower BIで作成したダッシュボードに反映させています。 このダッシュボードでは、これまでの発表件数、組織別の件数、発表者ごとの件数を時系列での推移やランキング形式など、様々な角度から活躍状況を可視化しています。
第一プロダクトデザイン部/第二プロダクトデザイン部(PD部)は、NTTドコモのコンシューマーサービスにおけるプロダクト価値向上とサービス基盤開発を担っています。PD部では、一人ひとりが自律的に成長し挑戦していける組織を目指しています。
そのために重要だと考えているのが「発信と称賛」による成長サイクルです。社員が学んだことや成果を社外講演やメディア掲載、社内での知見の共有などを通じて発信し、それらの活動が正しく評価され、称賛される。この経験が「自分の仕事が認められている」という実感につながり、さらなる挑戦意欲を引き出すと考えています。
また、他の社員にとっても「自分もチャレンジしてみよう」「こんな取り組みがあるんだ」という刺激になり、組織全体で学びと成長が循環する環境が生まれます。
これまでもExcelでの実績管理は行っていましたが、リスト形式でデータが並んでいるだけで視覚的なインパクトに欠けていました。「年間何件の活動があったか」「どの組織が積極的に取り組んでいるか」といった全体像を把握するには、都度集計作業が必要で、せっかくの活躍も埋もれてしまいがちでした。
そこで、称賛につながる「見える化」を実現するため、SharePointとPower BIを組み合わせた仕組みを構築しました。毎日更新されるダッシュボードにより、社員の活躍が組織全体で共有され、お互いを刺激し合える環境ができました。
ダッシュボード紹介
実際に作成したダッシュボードがこちらです。

このダッシュボードは、1画面でPD部全体の活躍状況を把握できます。これまでに蓄積された発表実績はもちろん、組織・個人ごとの発表件数や年間の発表件数推移などを直感的に確認できるようになっています。
作成の際に意識したのは、それぞれが積み重ねてきた取り組みがきちんと可視化され称賛されるようにすることです。埋もれてしまいがちな社員の講演やメディア掲載といった活躍も、ランキング形式で表示することで、一人ひとりの努力・貢献が正しく認められる環境を作ることを目指しました。
また、どの組織が・誰がどれだけの活動をしているかが一目で分かるようにしました。これにより、「○○さんがこんなに積極的に発表しているんだ」といった気づきが生まれ、お互いに刺激し合うことで、「自分もやってみよう」というチャレンジ意欲が自然に湧いてくる環境を目指しています。
さらに、フィルター機能を使えば、個人の視点では「去年より発表件数が増えた」といった成長を確認でき、マネジメント層の視点では組織全体の実績を把握できます。
このように、「発信と称賛」による成長サイクルを促進するためのダッシュボードとなっています。
実現の裏側
ここからは、ダッシュボード作成にあたっての少し技術的なお話をします。
実際の構築では、以下の3つのポイントを重視しました。
社員が事例を簡単に登録できること
社員の誰でもダッシュボードにアクセスできること
保守・運用が簡単であること
そこで、SharePointリストとPower BIの組み合わせを選択しました。 SharePointとPower BIはどちらもMicrosoft製品であるため相性が良く、SharePointリストに登録されたデータをPower BIで可視化するというデータの連携がスムーズに行えます。 SharePointリストであれば、もともと用意された入力用のUIがあるため、登録用のフロント画面を新たに開発する必要がなく、見慣れた画面で誰でも簡単に登録できます。
新しいシステムを一から開発するのではなく、社内ですでに利用しているMicrosoft製品を組み合わせることで、短期間かつ低コストでの実現を目指しました。
ちなみにSharePointリストには、「発表日」や「所属組織名」「発表者」といった基本的な情報に加えて、後からPower BIで様々な切り口で可視化できるよう、「種別(社外講演、社内講演など)」や「イベント名/記事タイトル」、「関連URL」といった項目を設定しました。 また、Power BIは社内で保有するライセンスの範囲内で、PD部の全員がダッシュボードにアクセスできるという利点もありました。
データの流れは非常にシンプルです。発表者がSharePointリストに活動内容を登録し、そのデータをPower BIが毎日自動取得してダッシュボードに反映します。Power BIを使うことで、複雑な設定や手動作業は一切不要で、登録すれば翌日にはダッシュボードに反映される仕組みを簡単に構築できました。
SharePointリストとPower BIを活用することでとても簡単に構築できた一方、最も苦労したのはデザイン面でした。仕組みとしては問題なく機能していたものの、当初作成したダッシュボードは「なんとなく見づらい」仕上がりになっていました。
そこで、デジタル庁が公開している「ダッシュボードデザインの実践ガイドブックとチャート・コンポーネントライブラリ(ベータ版)」を参考に、色遣いなどを見直しました。チャート・コンポーネントライブラリには、Power BIのデザインテーマが含まれており、これをPower BIに取り込むだけで見やすいデザインにできます。これからダッシュボードを作成される方は、一度チェックしてみることをおすすめします。
特別なシステム開発は一切不要で、既存のMicrosoft製品の組み合わせだけで実現できるため、特別なスキルがなくても再現可能ではないでしょうか。
取り組みにより生まれた変化
ダッシュボードの導入により、これまで個人の努力として埋もれがちだった講演やメディア掲載を、組織全体でわかりやすく共有できる仕組みを整えました。 数値として可視化されることで、一人ひとりの貢献が正当に評価される環境が整ったと考えています。
PD部では、本ダッシュボード以外にも様々な取り組みを通じて「発信する大切さ」を伝え続けており、総合的な効果として称賛文化が根付いています。ダッシュボードは、その文化を支える仕組みの一つとして、一定の役割を果たしているのではないかと思います。
また、自分の活動が可視化され、他の人の取り組みも見えることで、「発信→可視化→称賛→次の発信」というサイクルが生まれました。すぐに劇的な変化が現れるものではありませんが、学びと成長が循環する組織への進化につながっていくことを期待しています。
まとめ
この記事では、SharePointとPower BIという一般的なMicrosoft製品を組み合わせたダッシュボード構築について紹介しました。この方法は特別なシステム開発は不要なため、他の組織でも比較的容易に導入可能です。 大切なのは技術そのものではなく、組織としてどのような価値観を大切にし、それをどう具現化するかという視点だと思います。
この取り組みが、同じような想いを持つ組織の参考になれば幸いです!