1. 自己紹介
NTTドコモ 第一プロダクトデザイン部で 人事・人材育成を担当しているジル (本名:齊藤 亮二)です!
プロダクトチームが “One Team” として力を発揮できるよう、 アジャイル開発の浸透支援や学習機会の設計、
そして実際にチームに入り込んで伴走する アジャイルコーチ として活動しています!

↑今年の5月には、ボストンで行われたRed Hat Summit2025にて、アジャイルコーチや組織のチーム力向上の取り組みについて登壇してきました!
現場に寄り添いながら、メンバーが長所を活かして本来持っている力を引き出し、チームが自走できるようになる姿を見るのが何より好きです!!
2. 現場で感じた「ちょっとしたズレ」
今年の夏ごろ、2か月ほど社内の金融系プロダクトチームにアジャイルコーチとして支援しました。
スクラムマスターの方から「最近、退プロメンバー相次いでいる...それにベロシティ※も安定しない。」と相談を受けたことがきっかけです。 ※チームの“仕事の進む速さ”を数字で表したもの。
スクラムイベントに参加しながら現場に伴走する中で、 大きなトラブルがあるわけではないものの、いくつかの “ちょっとしたズレ” を感じました。
- 発言が特定のメンバーに偏りがち
- PO や SM にリードを任せすぎてしまい、自分の考えを出しづらい
- 遠慮から、思っていることを飲み込んでしまう場面がある
どれも「悪い状態」ではありません。 むしろ丁寧に開発を続けてきたからこそ、
役割やリモート環境に引っ張られた関わり方が、少しずつ積み重なっていたように見えました。
スクラムは本来、全員が同じ方向を向き、 お互いの考えを率直に出し合いながら価値を生み出すための枠組みです。
だからこそ、この小さなズレを放置せず、
「One Team」としての一体感を取り戻すきっかけ をつくりたいと感じました。
そこで、私は会議室でスクラムマスターに提案してみました。
「一度PCを閉じて、みんなを集めてチームビルディングしてみませんか?みんなで腹を割って話してみましょう!」
「チームビルディング、、、やったことないですが、やってみましょう!!!」
スクラムマスターの方は不安ながらも承諾してくださいました。
3. なぜ現地ワークショップを実施したのか
リモートワークが当たり前になった今、 チャットやオンライン会議だけで仕事が完結することも多くなりました。
一方で、そこにはこんな難しさもあります。
- 表情や雰囲気、沈黙の意味が伝わりにくい
- 必要最低限の情報だけ共有して終わりやすい
- ちょっとした違和感やモヤモヤが、そのまま積み上がりやすい
こうした小さなギャップは、時間とともに 「なんとなく本音が出しづらい」「任せてしまう」という空気につながります。
そこで今回は、一度オンラインを閉じて、
同じ場所に集まり、対話し、笑い合う時間 を意図的につくることにしました。
目的はとてもシンプルです。
チームの関係をつなぎ直し、
One Team としてもう一度歩き出すきっかけをつくること。

4. 実施した 3 つのチームビルディングワーク
今回の現地ワークショップでは、短時間でも効果が高く、
初対面同士でも取り組みやすい 3 つのワークを実施しました。
4-1. ハイドリーム & ロードリーム(チームの未来を可視化する)
まず行ったのが、チームの未来を言語化する ハイドリーム & ロードリーム です。
ハイドリーム:
チームが「こうなったら嬉しい」「こうありたい」と思う未来を、付箋に書き出すロードリーム:
チームが「こうなったら嫌だな」「避けたい状態」と感じる未来を、付箋に書き出す

↑左がこうなったら嫌、右がこうなったら嬉しいを付箋で貼ったもの。
これらを同じボードに貼り、全員で眺めながら対話しました。
急に全員では話しづらいので、必ずペアワークから始めます。
「気軽に相談できたら嬉しい」「しんどい時にしんどいと言いづらいチームは嫌だな」など出てきた付箋は様々。
「目指したい未来」と「避けたい未来」を並べて見ることで、
チームが大切にしている価値観や、意識しておきたいリスク が自然と見えてきます。
現在、ハイドリーム/ロードリームの付箋は、 そのままスプリントボードやレトロボードに貼り、 日々の目標や振り返りの軸として活用していただいてます。
4-2. ロールメッセージ(感謝と “Motto” を見える化する)
次に行ったのが、スクラムの各ロールにフォーカスする ロールメッセージ です。
PO/SM/Dev の 3 つの役割に分かれて、それぞれのロールに対して
- いつもしてくれていて 感謝していること(Good)
- もっとこうしてくれたら嬉しいこと(Motto)
を付箋に書き出し、壁に貼っていきました。
そのあと、付箋を見ながら「なぜそう感じているのか」を対話します。
普段なかなか伝える機会のない “ありがとう” と、
つい溜め込んでしまいがちな “もっとこうだと助かる” を、
安全に・建設的に言葉にできる場 になりました。
このワークを通じて、
- 「相手が自分に期待してくれていたポイント」
- 「自分が気づけていなかった、他ロールのがんばり」
に気づくメンバーも多く、
遠慮が少しずつほぐれ、役割を超えた One Team 感 が高まっていきました。

4-3. お絵描きワークショップ(透明性・検査・適応を“笑いながら”体験する)
最後に実施したのが、5人 1 組で 1 枚の絵を完成させる お絵描きワークショップ です。
各グループに 1 冊のスケッチブックとペンを渡し、
1 人 7 秒ずつ、リレー形式で絵を描き継いでいきます。

このとき、全部で3回実施するお題ごとに情報共有のルールを変えるのがポイントです。
1 回目のお題:椅子は外向き(情報共有なし)
誰が何をどこまで描いているか分からないまま、突然自分の番が来て描いていくため、
→ 仕上がりはバラバラで、統一感のない絵になります。正直何を描いているか分からない状態です。2 回目のお題:椅子を内向きに(お互いの描く様子が見える)
他の人が描いている様子を見ながら「こういう方向かな?」と描き進められるようになり、
→ 1回目のお題より、絵全体の方向性が分かりやすくなりました。3 回目のお題:事前 30 秒の会話+椅子の順番を変えてもOK+途中の軌道修正も OK
お題について軽く作戦会議してから描き始め、骨組みを書く人⇒デティールを書く人と描く順番を決めると、
→ 難しいお題でも、驚くほどまとまりのある絵に仕上がりました。絵のコンセプトやメッセージを伝える班もいました。
このワークを通じて、
- 透明性(何が起きているか見えること)
- 検査(途中で状況を確認すること)
- 適応(必要に応じて軌道修正すること)
といったスクラムの本質的な考え方を、
頭ではなく “体で” 理解することができます。
そして何より、
必ず笑いが生まれ、対面で会ったことない人同士でも一気に距離が縮まる、 とてもエネルギーの高い時間になりました。
↑「サッカーをするのび太」を描いた1回目のお題。代表者が絵のポイントを説明する際にチームに爆笑が起きました。(味のある絵ですね笑)
5. ワーク後に生まれたチームの変化
現地ワークショップを経て、普段のチームの活動にはいくつもの変化が見られました。
まず、会話と発言の量と質が変わりました。
- 発言が特定のメンバーに偏らず、いろいろな人から意見や提案が出るようになった
- レトロでも「リーダー的な人が話す」から、「全員で振り返りをつくる」場に変わってきた
- 改善案の数が増え、実際に消化できる割合も上がってきた
また、ワークで扱った付箋(ハイドリーム/ロードリーム/ロールメッセージ)は、
その後もスプリントボードやレトロボードに貼り続け、
- 日々の目標を思い出すための“アンカー”
- 振り返りの軸
- 行動や判断に迷ったときの “拠り所”
として活用されています。
↑翌週のレトロスペクティブからワークショップで書いた付箋を一つ取り出し、深ぼるための材料に!!
アンケートでは、ワークショップの満足度は 5 点(5 段階評価)、
NPS は +44 と、高評価をいただきました。

コメントからも、
- お互いの考えの違いと共通点が分かった
- 役割ごとの視点の違いに気づけた
- 普段話さないメンバーとも話しやすくなった
といった声が多く、
リモートでは見えにくかった “人としてのつながり” を回復する時間 になったと感じています。

↑参加者の気づきのコメント
6. まとめ:リモート時代のスクラムは “意図して” つくる

リモートワークが当たり前になった今、
One Team は「自然とできあがるもの」ではなく、
意図して、対話し、場をつくることで育てていくもの だと感じています。
スクラムチームが強くなるために大事なものは、きっとどの現場でも同じです。
- 何が起きているかが見える 透明性
- 立ち止まって状況を見直す 検査
- 必要に応じてやり方を変える 適応
- 安心して意見を言える 心理的安全性
- 「自分たちは何のためにここにいるのか」という 共通の目的
こうした要素は、ツールやプロセスだけで勝手に育つものではありません。
同じ空間で顔を合わせ、未来を語り合い、お互いの期待や価値観を共有する時間 があってこそ、少しずつ形になっていきます。
One Team は、偶然できあがるものではなく、
日々の対話と、小さな場づくりの積み重ねの先に生まれるものだと思います。
「チームがマンネリ化してきた」、「改めてスクラムチームを強くしたい」と感じたリーダーやスクラムマスターの皆さん、
ぜひチービルディングを実践してみてはいかがでしょうか?
今回の取り組みやワークの紹介が、 みなさんのチームでも「もう一度つながってみるか」と思うきっかけになれば嬉しいです。
参加した金融プロダクトサービスの皆さん(特に事前に何度も話し合った山口さん、渡部さん、矢野さん)、お疲れ様でした!