NTTドコモR&Dの技術ブログです。

技術がお金になっているか?─時間あたり採算で考えるエンジニアリングの価値─


はじめまして。
株式会社NTTドコモ 第一プロダクトデザイン部で開発エンジニアをしている平野裕介と申します。
私の仕事は、エンジニアの立場からチームメンバーと共に、エンドユーザへの価値提供や事業貢献をすることです。
ただある日、ふと思いました。
「自分の仕事の価値をどうやって人に伝えられるだろう?」


あなたは自分の技術がどれだけ利益に貢献しているか考えたことがありますか?

エンジニアとして働いていると「技術を深める」「新しいツールを試す」「コードを綺麗にする」といった行為は自然で当たり前です。
しかし、その技術がビジネス上どれだけの価値を生んでいるかを意識する機会は少ないのではないでしょうか。
特に大きな組織や下請け構造の中では、自分の時間がいくらで売られているのか、どれほどの価値を期待されているのかが見えにくくなります。
結果として、技術者が生み出している価値と、組織が評価している価値にギャップが生まれがちです。


「速く終わったのに、評価されない」の正体

「高いスキルで短時間で問題を解決したのに、評価されなかった」という経験はありませんか?
例えば、あるバグを1時間で直したとします。
複雑なコードを高速で読み解き、影響範囲を把握し、過去の知識と経験を活かして最適な修正を判断した結果、1時間で済んだだけです。

しかし周囲から見れば
「1時間で終わった仕事=軽い仕事」
と認識されることが珍しくありません。

本当は「短時間で終わったこと」自体が価値なのに、その背景にある技術力は見えず、作業時間だけが評価されてしまうのです。


時間あたり採算で考える重要性

組織がプロジェクトを運営するとき、人件費は「時間×単価」で計算されます。
しかし、エンジニアの価値は作業時間に比例しません。

  • コードを深く理解する能力
  • 問題の本質を突き止める分析力
  • 過去の知見を応用する経験値
  • 適切なツールやライブラリを選択する判断力
  • 将来的な保守コストを見据えた設計力

こうしたスキルが「時間を短縮し、プロジェクト全体の価値を最大化する」ことにつながります。
だからこそ、「自分の1時間はどれだけの利益に貢献しているか?」という視点が重要です。


価値を伝えないと「ないもの」として扱われる

生み出した価値を自分だけのもので終わらせては意味がありません。 価値を生んでいても、それを正しく伝えなければビジネス上は“存在しない価値”になってしまい、価値観を共有する事ができません。
たとえば、

  • 月30時間の作業を自動化で削減した
  • 新しい設計で将来の改修コストを50%削減できる
  • 次工程がスムーズに進むように基盤を整えた

こうした価値は数字で示さなければ見えません。
特にエンジニアリングは専門性が高く、非エンジニアには直感的に理解しづらい分野です。
だからこそ、価値を言語化して共有し、同じ価値観で評価することが重要です。
これは自慢ではなく、説明責任を果たす行為です。


「技術=コスト削減=利益貢献」という認識を浸透させる

技術は単なるコストではなく、利益を生む要素です。

  • 作業時間削減
  • 品質向上による障害減少
  • プロジェクト全体のスピードアップ
  • ユーザー体験の向上
  • 将来改修のしやすさ

これらはすべて、ビジネスに直接・間接的に利益をもたらします。
エンジニアがその価値を理解し、説明できるようになることで、評価制度やプロジェクトの進め方も変わっていきます。 最初はただの石ころにしか見えなかったものが、磨き方や見方を変えることで、実は価値ある宝石だったと気づく――そんな変化がきっと起きるはずです。

とはいえ、実際問題としてこれらを実行しようとするのは非常に難しく、言語化することは容易ではありません。
この行為には経験が必要ですし、実現には時間がかかります。
ですがこの考え方を意識しておくことで、自分にとってどれだけの価値があり、その価値をどれだけ高められたかという指標にすることはできるでしょう。


会議にも「価値換算」の視点を

この考え方は会議にも当てはまります。
無駄な会議は資産を失う行為です。
例えば、時給1,000円の人が50人集まれば、50,000円のコストです。
その会議で50,000円以上の価値を生み出せなければ赤字です。

ですが時間の価値を理解していないと、特にキャッシュアウトの無い作業では、この価値の喪失に気づくことはできません。
その事実に気づく事なく、打ち合わせをしたということで満足してしまいがちです。
人を呼ぶことやお願いするということは、人の価値を喪失させてしまう可能性があります。
もしそれでもお願いするならば、価値を届けるのだという思いが必要です。
だからこそ、事前に会議の目的やアジェンダを伝え、この会議を価値あるものにしようという意思をもって参加頂く事が大切なのです。

そしてこれは、エンジニアに限った話ではありませんし、どの役職に限った話でもありません。
企画部門でも法務部門でもデザイン部門でも、全てに等しく価値の考えが必要です。
責任者ともなれば「資料作って」「説明して」という一言で多くの方が動きます。
資料を見て、説明を聞き、最後に下す判断が価値あるものかを意識すること、そういった事に責任をもつことで価値向上につながります。

だからこそ、呼ぶなら価値を届ける、参加するなら価値を生み出す意識が必要です。


まとめ

わかりやすく共通の価値観が持ちやすいのでお金の話もしてきましたが、あくまで本質は「価値の理解」です。
また価値の算出方法に正解があるわけではありません。 ただ、自分の中に価値を判断するための軸を置くこと、そして自分の行動がどんな価値を生むのかを理解し、言語化し、伝えること。
そうしてみんなで同じ価値観を持ち、みんなでその価値を高めていくこと。 それがエンジニアに限らず、すべての職種で重要なのです。

まずは、自分の作業で削減できた時間やコストを数字で書き出すことから始めてみませんか?

この記事を読んだ時間が、あなたの価値を高めるきっかけになることを願っています。