はじめに
こんにちは。ドコモ6Gテック部の趙 寅暉(ちょう いんき)です。
2025年10月13日から17日、中国・武漢で開催された 3GPP SA2#171会合 に参加しました。本記事では、その様子と6Gネットワーク標準化の最新動向をご紹介します。
今回の内容は、8月のヨーテボリ会合レポートの続編です。過去の記事はこちらの開発者ブログでご確認ください。
SA2#171会合概要
今回の会合は、中国中部に位置する都市・武漢で開催されました。長江と漢江が交わる交通の要衝として知られています。歴史的には「九省通衢」と呼ばれ、古くから文化と経済の中心地でした。
世界各国から約300名の専門家が集まり、6Gネットワークアーキテクチャに関する国際的な議論が活発に行われました。

6G全体の進捗概要
今回の会合では、6Gネットワークアーキテクチャに関する多数の技術文書が提出され、標準化に向けた集中的な議論が展開されました。その結果、ネットワークシェアリング、ネットワークスライシング、固定無線アクセスに関する提案が承認されました。
一方で、残りのテーマについては合意に至らず、ほとんどの文書は次回会合に持ち越しとなっています。次回は検討範囲(Scope)と検討課題(Key issue)を確定する最後の機会であり、議論の加速が期待されます。
※11月に開催された次回会合では、すべてのテーマの検討範囲と検討課題が合意され、6Gアーキテクチャの議論は次のフェーズへ進みました。
6Gに関する主な議題と進捗
6Gネットワークアーキテクチャの議論は、すでに8つの主要テーマに整理されています。これらは、6Gネットワークの進化を方向づける重要なテーマであり、次世代サービスの実現に直結する議論です。詳細な背景や各テーマの概要は、5月のブログ記事をご参照ください。
今回の武漢会合では、特に注目されていたネットワークスライシングの検討範囲(Scope)がついに合意されました。
ネットワークスライシングは、サービスやユースケースごとにネットワークを論理的に分割し、柔軟かつ効率的なリソース利用を可能にする技術です。これは、前回合意されたネットワークシェアリングに続く重要な進展であり、6Gにおける柔軟なネットワーク構成を実現するための大きなステップです。 合意された検討範囲は以下の通りです:
機能の改善と簡素化:既存のスライシング機能を見直し、よりシンプルで効率的な設計を目指す。
トラフィックマッピングの最適化:アプリケーションの通信を適切なネットワークスライスやユーザプレーン接続に割り当てる仕組みを改善。
相互接続と移行への影響:6Gスライシングが既存ネットワークとの連携や移行に与える影響を検討。
さらに、今回の会合では以下の技術項目についても議論が行われました:
Stateless NF(ステートレスなネットワーク機能):ネットワーク機能(NF)がセッションやユーザ状態を保持しない設計にすることで、スケーラビリティや障害時のレジリエンスを向上させるアプローチです。
ISAC(通信とセンシングの統合):通信とセンシングを統合し、ネットワークが環境情報を直接取得できるようにする技術で、自動運転やスマートシティなどのユースケースで期待されています。
IoT(Internet of Things):身の回りのモノをインターネットにつなげて情報をやり取りする仕組みで、6G時代には省電力で大量のデバイスを同時接続できることが特徴です。
私自身、ネットワークスライシングの合意形成に加え、これらの議論にも積極的に参加しました。いずれも次世代ネットワークの方向性を決定づける重要なテーマですが、各社の意見の違いや時間的制約により、検討範囲の合意には至りませんでした。今後の議論の行方が注目されます。
ソーシャルイベント
技術議論だけでなく、参加者同士の交流を深める場も設けられました。今回の会合を記念して帽子とバッグが作製され、和やかな雰囲気の中で新しいつながりを築くことができました。
特に印象的だったのは、休憩時間や夕食の場での他社エンジニアとの会話です。6Gに向けた課題や各社のアプローチについて率直に意見交換でき、異なる視点からの考え方を知ることで、自分の理解がさらに深まりました。標準化活動は文書や会議室での議論だけでなく、こうした非公式な交流が信頼関係を築き、合意形成を加速する重要な要素だと改めて感じました。

おわりに
今回の会合では、ネットワークスライシングの検討範囲の合意をはじめ、6Gに向けて大きな一歩を踏み出しました。次回会合では各テーマの検討課題の確定に向けた最終調整が行われ、標準化の方向性を決定づける重要な局面を迎えます。議論はさらに白熱することが予想されます。
引き続き、現場で得られた最新情報を開発者ブログでお届けしますので、ぜひご期待ください。
