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【6GとAI Agentが実現する未来のコミュニケーションとは?】3GPP SA1で議論されているユースケースを紹介!

はじめに

みなさん、こんにちは!ドコモ 6Gテック部の増子佑基です。私が4月に新入社員として入社し、標準化の世界に飛び込んでから、早半年程が経ちました。今回は、私が特に面白いと感じている「AI Agent」に関する3GPPでの最新動向をご紹介したいと思います。

近年、生成AIの進化が目覚ましく、私たちの生活や働き方を大きく変えようとしています。この波はモバイル通信の世界にも訪れており、将来の6G では、AI Agentがユーザーの強力なアシスタントとして活躍することが期待されています。3GPPでは、このAI Agentをモバイルネットワークでどのようにサポートしていくか、活発な議論が始まっています。

本記事では、その議論の最前線、特に3GPP※1のSA1※2で検討されている未来のユースケースや、それが私たちのコミュニケーションをどのように変えるのかについて、標準化初心者の私なりの視点も交えながらお伝えします!

※1 3GPP (3rd Generation Partnership Project): 3G(第3世代移動通信システム)の標準仕様を策定するために設立されたプロジェクト。現在では、それにとどまらず4G (LTE) や5G、そして次の世代である「6G」の国際標準仕様を策定しています。(詳細はこちらの記事にてご紹介していますので、ぜひ読んでみてください。)

※2 SA1 (Service and System Aspects Working Group 1): 3GPPにおけるワーキンググループの一つ。モバイル通信システムで実現すべきサービスやその要求条件を定義する役割を担っています。(詳細はこちらの記事にてご紹介していますので、ぜひ読んでみてください。)

AI Agentは日常のコミュニケーションをどう変えるのか?

私が担当しているSA1では、6Gでどのようなサービスを実現すべきか、その要求条件を議論しています。その中でも特に活発な議論テーマの一つが「AI Agent」です。AI Agentとは、環境を認識し、自律的に判断・行動して特定の目的を達成しようとする自律システムです。これがモバイルネットワークと連携することで、一体どのような未来が待っているのでしょうか?

SA1でのAI Agent関連のユースケース紹介

現在、SA1では6G向けの技術レポート(TR 22.870)の中で、AI並びにAI Agent関連のさまざまなユースケースが議論されています。そのなかから、特に未来を感じさせる、私が個人的に面白いと思ったユースケースを2つご紹介します。

  • ユースケース①:AI Agentにお願いするだけ!移動中の「つながる」を事前に保証

出張等の移動中に、列車の中で大事なオンライン会議が…!「でも、途切れたらどうしよう…」そんな不安をAI Agentが解決してくれる未来です。

【シナリオ】

  1. ユーザーはネットワークのAI Agentに、「明日、A地点からB地点へ向かう列車で、午後2時頃に大事な会議があるので、その間の高品質な通信を確保してほしい」と伝えます。
  2. この曖昧な意図を受け取ったAI Agentは、ユーザーの要望を分析。列車の時刻表のような信頼できる外部情報にアクセスし、ユーザーが乗車しそうな列車を特定します。
  3. 次にAI Agentは、その列車のルートやそのルートをカバーする無線基地局を特定し、会議時間中のQoE(体感品質)を予測します。
  4. 最終的に、料金付きの「品質保証プラン」を複数生成し、ユーザーに提案します。
  5. ユーザーがプランを選択すると、AI Agentはネットワークリソースを事前に設定し、当日の安定した通信を実現します。

まるで専属コンシェルジュのように、ネットワーク自身がユーザーの要望を先読みして最適な通信環境を準備してくれるような未来を感じさせるユースケースです。

ユースケース①のイメージ図

  • ユースケース②:シェアサイクルならぬ「シェアロボット」? AI Agent同士のその場限りのチームアップ

街中のシェアサイクルのように、将来は様々な能力を持った「シェアロボット」が配置されるかもしれません。このユースケースは、そんな世界での新しいAI Agentの連携の形を示しています。

【シナリオ】

  1. ユーザーは、買物のお手伝いをしてくれる相棒のロボットを持っています。ある日、モールで大きな家具を買いましたが、相棒1台では運べません。
  2. 困っていたユーザーは、道端で事業者が提供する「シェアロボット」を発見。QRコードをスキャンしてレンタルし、自分のロボットとの連携を許可します。
  3. すると、ネットワークを介してシェアロボットと相棒ロボットが接続され、その場限りのタスクチームを結成します。
  4. チームを組んだ2台のロボットは、協調しながら大きな家具を家まで運びます。
  5. タスク完了後、シェアロボットの利用を終了。ユーザーは利用時間や運んだ荷物の重量などに応じて利用料金を支払います。

もはや通信の主体は人間だけではありません。街中の「モノ」がAI Agentとして自律的に通信し、必要に応じて人間やほかのAI Agentとチームを組む。そんなSFのような世界観が3GPPでは真剣に議論されています。

SA2での議論状況

SA1で策定したユースケース・要求条件に基づいてアーキテクチャ設計を担当する隣のグループ、SA2では、いよいよ6Gアーキテクチャの具体的な検討が始まります。

SA2における6G標準化タイムラインや主な作業項目については、下記の8月会合のレポートをご確認ください。

nttdocomo-developers.jp

現在、議論すべき大きな項目(Work Task)の中にある具体的な検討課題(KI:Key issue)を明確にする作業が行われています。 例えば、今回ご紹介したAI Agentのユースケース関連だと以下のようなKIが議論されています。

  • AI Agentにどこまでネットワークの情報を見せるべきか?

    例えば、「品質保証プラン」を作るAI Agentが未来の通信品質を予測できるように、ネットワークは「将来の混雑予測」といった、これまでになかった高度な内部情報を外部のAI Agentに公開すべきか、といった議論などです。

  • AI Agent同士がどうやって通信するのか?

    例えば、自分のAI Agentロボットが、街中にいる手伝ってくれるAI Agentロボットをどうやって見つけるか、といった議論などです。

このように、SA1で描いた未来のサービス像を、具体的な技術アーキテクチャに落とし込むための議論がSA2で進められています。

おわりに

今回は、私が特に未来を感じている「AI Agent」について、3GPP SA1で議論されているユースケースを中心にその最新動向をご紹介しました。

正直なところ、標準化活動を始めた当初は、世界中から提出される膨大な量の寄書と専門用語の数々に圧倒されるばかりでした。しかし、一つひとつの提案を注意深く読み解くうちに、各社の寄書からは単なる技術提案だけでなく、「彼らがどのような未来の通信サービスを描いているのか」という思想まで見えてきて、その面白さに気づきました。

一日も早く世界のトップエンジニアたちと直接議論を交わせるようになることを目標に、これからも頑張っていきたいと思います。今後のドコモの標準化活動にもぜひご注目ください!

お読みいただきありがとうございました。