NTTドコモR&Dの技術ブログです。

AIによる高電力効率な基地局制御への挑戦!

こんにちは。ドコモ6Gテック部の田村です。 2025年11月に開催されたNTT R&D FORUM 2025にて展示した内容をご紹介します。今回ご紹介するのは、複数基地局を制御し最適なネットワークを維持しつつモバイルネットワークの基地局の消費電力を抑えることで省電力化する「高電力効率を実現する無線基地局最適化AI」に関する展示です。本展示は「NTT株式会社 ネットワークサービスシステム研究所」および「NTT株式会社 アクセスサービスシステム研究所」と共同で出展しました。本記事では、展示内容と技術のポイントを紹介します。

NTT R&D FORUM 2025 開催報告はこちらからご覧になれます。 展示リーフレットはこちらからご覧になれます。

展示ブース

背景

この技術を一言でいうと、AI技術によってネットワークを自動で省電力化するための技術で、現在研究開発を進めています。

ネットワーク制御の難しさ

電力を自動で削減するためには、ネットワークのさまざまな装置の設定を状況に応じて変更する必要があります。しかし、制御に使うパラメータ(設定値)は多く、従来は 専門知識と経験を持つ運用者が慎重に判断する必要がありました。さらに、広いエリアを人手で逐次調整するのは現実的ではありません。 そこで今回の展示では、“こうしたい”を伝えるだけで、ネットワークの制御を行う仕組みに取組んでいます。

消費電力の削減方法

モバイル通信は、スマートフォンが周囲の無線基地局と電波で接続し、その先でコアネットワーク(認証やルーティングなど通信の中枢を担う装置群) を通って、インターネットや通話先につながります。

モバイルネットワークのエリアを作るには必ず基地局を配置する必要があります。そのためモバイルネットワーク全体の電力消費は、基地局の比率が大きいといわれています。
その基地局の消費電力を下げることができると、ネットワーク全体としての省電力・CO2削減に大きく貢献できます。

基地局の消費電力を下げる代表的な方法は、使われていない周波数帯の電波を一時的に停める(バンドスリープといいます) ことです。

また、基地局ではアンテナの角度(チルト角)を調整し、電波の届く範囲を変えることができます。 これらを状況に応じて最適化できると、消費電力を下げることができます。

説明風景

本技術:チャットで「やりたいこと」を伝えると最適化する

今回の展示では、チャットボットに“こうしたい”を伝えるだけで、基地局の制御を行う仕組みを紹介しました。 例:

  • 「△△エリアで通信品質を確保しつつ、消費電力を下げたい」

チャットボット画面イメージ

このようにチャットで会話をするようにしてどのようなネットワークの状態にしたいかをシステムに入力をするとシステム側でそのエリアの天候やイベントの情報を考慮して、通信速度と消費電力を考慮した最適な「アンテナの角度」と「バンドスリープ」の情報を基地局に与えます。

この実現のために、主に2つの技術を組み合わせています。

  • Intent抽出技術(あいまいな要望を定量的な指示に変換)
  • 無線基地局最適化AI(バンドスリープの判定・アンテナの角度を算出)

技術①: Intent抽出技術(あいまいな要望を定量的な指示に変換)

Intent抽出技術はチャットの文章から「何を実現したいか(要望)」を読み取り、定量的な指示に変換します。

この要望をIntentと呼び、 Intentに従いネットワークを管理する手法が世界的に注目されています。

従来はネットワークを制御するために装置ごとに具体的な指示(例:アンテナ角度は○○度、□をバンドスリープするなど)を入力する必要がありました。 しかし、これは専門知識がないと難しい作業です。 一方で、次のような要望は比較的伝えやすいはずです。

  • 「通信品質は落とさずに、消費電力を下げたい」

このように何を実現したいかというIntentをチャットボットとの会話を通して抽出することによりネットワークの制御を行う運用者はノウハウや知識が少なくとも適切な制御を行うことができます。

技術②:無線基地局最適化AI(バンドスリープの判定・アンテナの角度を算出)

無線基地局最適化AIは、次の2つで構成されています。

  • 基地局バンドスリープ判定AI:電波を停止させるか判断
  • 基地局チルト角最適化AI:アンテナのチルト角を算出

システム内でこの2つのAIの出力を確認し調整を繰り返すことで要求に対して最適な制御案を導きます。

得られる効果

本技術によりネットワークの制御を行う運用者はノウハウや知識が少なくとも適切な制御を行うことができます。また、基地局で使用する電力を抑制することができ、温室効果ガス削減に貢献できる技術です。

展示について

今回の展示ではさまざまな業界の方に訪れていただき、多くのご質問やフィードバックをいただきました。また、本技術実証の内容やいただいたフィードバックは6Gの標準化にむけてIntentなどの技術に関してさらなる高度化を行うための材料となります。

今後の予定

本技術の一部は、6Gに向けて3GPPなどの標準化の場へ提案していく予定です。 よりサステナブルな通信インフラの実現に向けて、引き続き研究開発を進めていきます。

ドコモのサステナビリティに関する取組みはこちらからご覧になれます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!