NTTドコモR&Dの技術ブログです。

【現場受け入れ型インターンシップ】6G国際標準化に向けた無線技術検討

はじめに

こんにちは!NTTドコモ 6Gテック部の平野です!

ドコモでは様々なインターンシップを開催しています。その中でも、現場受け入れ型インターンシップは、実際の職場で社員と共に実務の体験ができる実践型のインターンシップです

今回は2025年の夏に行われた現場受け入れ型インターンシップ(詳細はこちら)に関して、私たちのチームで行った内容を紹介します。また実際に参加いただいた高木さんの感想も最後に紹介します

本インターンシップでは、高木さんに技術テーマの課題調査から解決策の検討までを取組んでいただきました

ドコモのインターンシップや無線通信の標準化に興味がある方は、ぜひ最後までお読みください!

私たちのチームの業務内容のご紹介

主に3GPP (Third Generation Partnership Project) と呼ばれるモバイル通信システムの国際標準化会合に参加し、技術の提案や議論のリードを行っています

標準化とは、世界共通のルールを決めることで、3GPPでは5Gや6Gなどのモバイル通信システムの世界共通の仕様が議論されています。3GPPや3GPPにおけるドコモの取組みの詳細については、こちらのブログで詳しく紹介していますので、興味のある方はあわせてご覧ください。

3GPPでは、会合に先立って各社から提出される寄書と呼ばれる文書があります。寄書は3GPPの毎会合各社から提出されるもので、各社が主張を表明し議論の材料とするために使います。もちろんドコモでも寄書を執筆し、3GPPに提出をしています。

2025年8月(6G初回議論)のドコモ寄書(リンクはこちら:R1-2506304

3GPPでの議論は、事前に技術内容を検討し、他社の意見を把握したうえで、ドコモとしてどのような提案を行うかを決める準備が非常に重要です。事前に他社の意見を網羅的に把握し、それを基にチーム内でじっくり多角的に分析し対応方針を練っておくことで、どんどん進んでいく会合中の議論においても適切に意見の入力ができ、ひいては自社の技術提案が採用される可能性を高められます。

会合開始までの流れは図のようになります。

3GPP会合開始までの流れ

今回のインターンシップでは、その準備段階にあたる技術検討を体験していただきました

インターンシップ概要

今回のインターンシップの特徴は、まずオフィスツアーや社員との交流会を通じてドコモの雰囲気や働き方を肌で感じられることです。社員との交流会では、1, 2年目の若手社員やさまざまなキャリアを歩んでいる中堅社員など、さまざまな社員と交流していただきました。

そして何よりのメインは、先ほどご紹介した3GPPに向けた技術検討を実際に体験ができる点にあります。 6Gに関する最新の技術テーマについて、標準化経験のある社員のサポートを受けながら、技術提案に至るまでの一連の流れを体験していただきました。

2週間のインターンシップは下図の全体スケジュールで進めました。

インターンシップ全体のスケジュール

6G国際標準化に向けた無線技術検討(高木さんに実施いただいた内容)

ここからは、インターンシップのメインである技術検討の内容を、実際に高木さんに行っていただいた内容を基にご紹介します。

技術提案は、先述した寄書を基に行っていただきました。実際に技術検討をする際にも、前回の会合までに提出された寄書や議論サマリを参考にします

本インターンシップでは、2025年8月に開催された会合の寄書を読んでいただきました。この会合は6Gの技術議論が行われる初回会合で、各社の6Gに対する考え方が網羅的に示された会合になるため、技術検討をする上では非常に参考になる文書です。

今回取り組んでいただいた技術テーマは、6Gのホットトピックである端末側の省電力技術の一つ、LP-WUS(Low Power Wake-Up Signal)に関するものです。LP-WUSは、従来よりも簡易な信号のやり取りを実現することによって端末の省電力を図る機能で、5Gでも最近標準化されました。

LP-WUSの概要

高木さんには、寄書をベースに課題の調査→解決策の調査→解決策の検討という流れで技術検討を行っていただきました。

技術検討の流れ

課題の調査のパート

まず、LP-WUSという機能が現実的に省電力性能を発揮するための、実装や動作の具体的な例をイメージいただくことで、その結果考えられる課題の洗い出しに取り組んでいただきました。たとえば、LP-WUSを受信する簡易レシーバは低消費電力で動作することが前提となることから、簡易的な実装を想定されており、LP-WUSの受信品質が他の5G 信号に対して劣化するという課題がありました。これにより、セル内でLP-WUSを受信できるエリアが通常のエリアに比べ減少してしまうなどのデメリットが発生します。また、簡易レシーバの消費電力をより削減するために、LP-WUSとして仕様化された信号は、その振幅の大きさを読み取るようなデザインとなっており、ある程度の検出精度を担保するためにより時間方向に信号を伸ばす必要があります。これにより無線リソース消費量の増加という課題が発生します。これは、ネットワーク側の消費電力の増加や無線リソース利用効率の低下などを引き起こします。これらの課題や実際の運用観点でのデメリットについて、寄書を読んで調査いただき、LP-WUSにおける課題を理解・整理いただきました

解決策の調査のパート

次に、先述したLP-WUSの受信品質の低下と必要な無線リソースの増加の課題を解決するための解決策を調査・検討いただきました。その結果、5GのLP-WUSで使用されている信号方式よりも高精度な信号方式を用いるという解決策を立案いただきました。たとえば、信号の振幅を読み取るのではなく、信号系列の相関を取る方式を採用することで、受信品質の向上が期待できます。また、この結果時間方向に信号を伸ばす必要性も小さくなるので、ネットワーク側の電力消費増加及び無線リソース利用効率の低下も回避できます。

解決策の検討のパート

最後に、より高精度な信号方式を用いるという解決策が6Gにおける端末の消費電力削減技術として提案できるかを判断するために、立案頂いた解決策そのものにもデメリットがあるかどうかの分析とそのデメリットの解決が現実的に可能かどうかの調査を行っていただきました。まず、より高精度な信号方式を用いる際のデメリットとしては、受信動作自体が複雑になる分、端末の消費電力削減量が下がってしまう点があります。これは、本来訴求している端末の消費電力削減を狙う意図と逆行しており、大きなデメリットであるため、改善する必要があります。このデメリットの解決策としては、一つのLP-WUS信号の構成や通知できる情報量を最適化するという方針を立案いただきました。例えば、一つのLP-WUSでより多くの情報を通知することで、端末毎に低消費電力動作をとるタイミングの最適化などが見込め、端末の省電力効果の向上が期待できるためです。信号系列の数や系列長を増やすことで、上記の通知情報量の拡張と信号の検出性能の改善の両方を狙うという方法を提案いただきました。以上のように、解決策の立案だけでなく、その解決策で発生するデメリットを分析し、改善策を調査いただくことで、より効果的な解決策の検討を行っていただきました。そして、最終的には高木さんとして6GのLP-WUS向けに提案するという結論を出すところまで行っていただきました

無線技術検討のまとめ

技術検討の具体的な進め方としては、高木さんに寄書を読んでいただき、その内容を踏まえたうえで、先述した課題およびその解決策について主体的に検討してもらう形で進めました。単に寄書を読むだけではなく、論点の整理や背景理解を行い、自身の考えをまとめるプロセスを重視しました。

検討期間中は、社員が定期的に進捗確認を行い、議論の方向性や検討内容についてフィードバックを実施しました。また、不明点があればその都度すぐに質問できる環境を整え、疑問を早期に解消しながら理解を深められるようにしました

以上のプロセスを踏まえることで、標準化というグローバルな業務そのものに実際に携わる機会を体験いただきました。さらに、最先端の議論の実態に触れながら、実際の標準化担当者から直接かつ丁寧なフィードバックを受けるという経験の場を設けました

高木さんからのコメント

ここからは、実際にインターンシップに参加いただいた高木さんの声を紹介します。

高木さんのインターンシップ参加経緯

私は以前、実際に標準化に携わっていた方から標準化業務についてお話しを伺う機会があり、強い興味を持ちました。 大学院では、高速かつ低消費電力な無線通信に関する研究に取り組んでおり、同時にグローバルな視点で技術が社会に広がっていくプロセスにも関心がありました。

こうした背景から、標準化の現場で求められる考え方や業務内容を深く理解し、研究がどのように実用化につながっていくのか知りたいと考え、インターンシップへ参加しました。

インターンシップを通して学んだこと・感じたこと

インターンシップでは、標準化業務の進め方を実務に近い形で学びました。特に印象に残ったのは、各社の寄書を読み比べ、提案の狙いや前提、論点を整理して共通点・相違点を把握していく作業です。論文とは異なり、提案の意図や検討すべきポイントを抽出して議論につながる形で整理する必要があり、読み取りの視点が広がりました。

技術面では、省電力化に関する検討を通して、LP-WUSなどの技術要素を学びました。また、資料作成では、論文の整合性を保ちながら具体的に示すこと、質問対応では正確さに加えてスピード感が重要だと実感しました。一方で、議論を深く理解するには業界動向やユースケースなどの情報収集が欠かせないと気づき、今後の課題として意識するようになりました。

最後に、今回のインターンシップでは、技術展示の見学に加えて社員の方々と直接お話しできる機会を多くいただき、現場の視点や考え方に触れながら学びを深めることができました。業務の理解が一段と具体化し、今後の研究やキャリアを考える上でも大きな刺激となる、非常に貴重な経験となりました。

おわりに

今回は私たちのチームのインターンシップについて、体験内容と参加いただいた高木さんの声をご紹介しました。来年度もより充実したインターンシッププログラムを計画中です。

興味を持った方は、ぜひインターンシップへの参加をご検討いただけますと幸いです!(インターンシップのリンクはこちら