はじめに
こんにちは。ドコモ6Gテック部の1年目社員、菊池 大希(きくち たいき)です。このたび、3GPP SA2 #173会合に参加する機会をいただき、はじめて国際標準化会合に現地参加してきました。本ブログでは、
- 会合はどんな場所で開催されたのか
- はじめて国際会合に参加して感じた雰囲気
- 私が会合で何をしてきたのか
といった点を中心に紹介していきたいと思います。ドコモでのグローバルな業務や、標準化業務に興味のある方に、少しでも雰囲気が伝わればうれしいです。
- はじめに
- 第1章 今回参加した会合について
- 第2章 会合開催地・ゴアの雰囲気
- 第3章 はじめての国際会合で感じたこと
- 第4章 議論には「場」がいくつもある
- 第5章 「話しかける」ハードルは最初の一歩だけ
- 第6章 次回に向けて
第1章 今回参加した会合について
今回私が参加したのは、3GPPの中でもSA2(SA WG2 - System Architecture and Services)と呼ばれるワーキンググループの会合です。3GPPとは一言でいうと、 モバイル通信の世界共通の仕組み(標準)を作る国際プロジェクトです。SA2では、モバイル通信のコアネットワーク*1の要素構成や機能を中心にモバイルシステム全体の設計を議論し、仕様としてまとめています。普段私たちが使っている通信サービスの裏側にあるネットワークの仕組みを決めるグループと考えると、イメージしやすいかもしれません。ここでは詳細は割愛しますが、3GPPやSA2についてより詳しく知りたい方は、以下のドコモ開発者ブログもぜひご覧ください。 nttdocomo-developers.jp nttdocomo-developers.jp
第2章 会合開催地・ゴアの雰囲気
今回の会合開催地は、インドのゴアでした。2月の開催ということで、東京では雪が降るほど寒い時期でしたが、現地に到着すると昼間の気温は30度もあり、想像以上の暑さでした。会場はホテル内の大きなホールでした。白い机と椅子がずらっと並んだ清潔感のある空間で、その整然とした雰囲気にすでに緊張してしまったのを覚えています。
会議が始まると会場は200人ほどの参加者で埋められ、周囲は知らない人ばかりでした。その一人ひとりが各社を代表して参加しており、熟練の技術者であると思うと、さらに緊張が増しました。会合初日は、その不安から先輩方の隣に座り会合に参加しました。一方で、別の日に一人で座ってみると、近くに座ったほかの参加者と自然に会話が生まれ、そこから技術的な議論に発展することもありました。座り方ひとつで知り合いを増やすことができ、こうした工夫がとても大事なものだと感じました。

第3章 はじめての国際会合で感じたこと
緊張の会合参加
会合が始まると、正直、議論の方向性が掴めなかったり、英語が理解できず戸惑う場面もありました。特に、マイクの前で発言する際は、緊張も相まって頭の中が真っ白になりかけました。この緊張感は、今後の会合でも積極的に発言し、経験を積むことで慣れていきたいと感じています。雑談レベルの会話や、文の構成・表現に関する議論など、技術そのものから少し離れた部分についても難しさを感じました。このような点は準備だけでは埋めにくく、英語力も含めて今後の課題だと感じています。
私は留学経験はなく、学校教育や大学院時代の研究を通じて英語力を身につけてきました。入社後は、社内の語学支援を利用し、英語を使う機会を増やしています。技術に加えて、議論の土台となる英語力をさらに伸ばす必要性を強く感じました。
事前準備によって対応できた技術的な議論
一方で、技術的な議論については、事前準備でカバーできたとも感じました。今回私が担当した分野の一つにネットワークスライシングがあります。会合参加前から、5Gの仕様書や他社の提案書(寄書)を読み込み、社内各所とも連携し現地での議論の準備を進めてきました。この準備のおかげで、他社としっかり意思疎通をとって議論することができました。この準備を継続して実践していきたいです。
第4章 議論には「場」がいくつもある
今回参加してみて、会合にはさまざまな形の議論があることを実感しました。
会場で全員が順番に発言する公式の議論
進行は比較的ゆっくりですが、参加者が自由に発言するため、理解が難しいと感じることもありました。ただし、事前準備で各社の寄書内容を把握しておくことで、発言の意図を理解しやすくなりました。
オフラインでの1対1の議論
興味のある技術ポイントについて担当者に声をかけると、みなさん好意的に議論してくださいました。相手がこちらのペースに合わせてくれたり、聞き取れなかった場合に言い直してくれたりと、比較的議論しやすい形でした。会合中は、こうしたオフライン議論が休憩時間の至るところで行われており、私にとっては、この形が一番の「練習の場」になりました。
オフラインで複数人が集まる議論
会合期間中にメールの案内で開催されることがあります。資料をベースに議論するのですが、私が資料を理解している間に話がどんどん進み、発言のタイミングも掴みづらく、これが一番難しかったです。
会場の公式の議論では時間が足らなかったり、細かい議論ができなかったりするので、オフラインの議論は非常に重要です。今回の会合では、主に1対1議論を通して、各社と意思疎通・意見交換できたことが大きな収穫でした。今後は、1対1議論で経験を積みつつ、全体議論や複数人議論でも情報収集や交渉ができるようになりたいと思います。

第5章 「話しかける」ハードルは最初の一歩だけ
会合の序盤は、オフライン議論でも誰も知らないため、話しかけること自体のハードルが高く、誰に声をかければよいかもわかりませんでした。しかし、先輩にさまざまな会社の担当者を紹介してもらい、一度話してみると、担当領域に関して十分議論し、よい情報交換ができました。これで自信がつき、そこからはより多くの方に話しかけられるようになりました。特に、同じ考え方を持っている方とは、前提の説明が少なくて済む分、短時間でも密度の高い意見交換ができました。一方で、異なる意見を持つ方との議論は、まず自分の意見を明確に示す必要があり、難易度が高いと感じました。「どう説明するか」「どう意見を引き出すか」は、今後の大きな課題です。
第6章 次回に向けて
今回の会合参加を通して、会合に向けた準備の仕方や1対1での技術議論のおいて良い成果を得ることができました。また、多くの他社の参加者と知り合ってお話しできたことは、今後の会合や標準化活動にもつながる収穫です。一方で以下のような課題も見えてきました。
- 会場では一人で座るなど、よりほかの参加者とコミュニケーションを取る工夫をする
- 語学スクール支援などを活用し、実践で使える英語力を高める
- 1対1議論で経験を積み、複数人議論にも自然に参加できるようになる
これらの学びを糧に、次回の会合ではさらに議論に参加し、ドコモに貢献できる存在、ひいては日本に貢献できる存在になれるよう、努力していきたいと思います。また、このブログを読んで、標準化業務に興味を持った方は、ぜひ一歩踏み出してみてください!標準化は決して遠い世界の話ではなく、若手でも挑戦できるフィールドです。
information.nttdocomo-fresh.jp
コラム “How are you?” に込められた意味
学校の英語の授業で、 “How are you?” – “I’m fine, thank you. And you?” という挨拶を覚えた方も多いのではないでしょうか。私自身、「学校で習う定型文」という印象が強く、深く考えたことはありませんでした。しかし、海外の方と実際に会話をするようになると、この “How are you?” を本当によく耳にします。
ある朝、ホテルで朝食をとっていたときのことです。宿泊客がスタッフの方に声をかける際、最初に発したのは “How are you?” でした。スタッフの方が “Good.” と答えると、宿泊客はすぐに “Excellent!” と少し大げさなほどに返し、その後で本来の要件を伝えていました。このやりとりを見て、“How are you?” は単なる体調確認ではなく、会話の前にワンクッション置き、関係性を整える言葉なのだと感じました。
相手の状態を気にかけ、その返答を肯定する。それだけで、会話の空気は自然と柔らかくなります。これは、ホテルでのお願いごとに限らず、会合やビジネスの場でも同じだと思います。いきなり要件に入るのではなく、まず相手を尊重する一言を添える。その積み重ねが、議論や交渉を円滑にしているのだと感じました。そんなことに気づかせてくれた、ゴアの朝でした。
*1:コアネットワークとは?
コアネットワークとは、スマートフォンが基地局につながったその先で動いている、通信サービスの中枢部分です。例えば、以下のような処理を担っています。
- ユーザーを認証する
- インターネット接続を成立させる
- 離れた場所にいるユーザー同士をつなぎ、通話を成立させる