はじめに
こんにちは。ドコモ6Gテック部の石井 大耀(いしい ひろあき)です。 2026年2月9日~13日にインド・ゴアで開催された3GPP SA2#173会合および3GPP SA4#135会合に参加しました。
本記事では特に、3GPP SAにおける “AI traffic” の最新動向をご紹介します。
今回の内容は、一部分に特化した形ではありますが、11月のダラス会合レポートの続編です。過去の記事はこちらの開発者ブログでご確認ください。
【3GPP SA2#172会合】6GアーキテクチャKey issue決定
また、今会合が3GPP会合初参加だった方の記事がこちらにありますので、もし初参加ならではの観点などにご興味がありましたらぜひご確認ください。
ドキドキの国際舞台!3GPP SA2 現地参加デビュー!
【6Gの兆しを感じる!】1年目社員の緊張と度胸の標準化奮闘記
AI traffic とは
まずAI trafficがどのようなものか、どのような議論が行われているのかご紹介します。
ここ数年でみなさんもAI、特に生成AIやそれを利用したAIアプリケーションの台頭を実際にご自身で触ることやネットニュースなどから感じているかと思います。そのように今利用が増えているAIアプリケーションによって発生するトラヒックをAI trafficと表します。本記事内における「トラヒック(traffic)」とは、情報システム間でやり取りされる通信データの量、のことを指すものとします。
AI trafficに関して世の中的にも注目度が高い状況です。
たとえば、現在いくつかの3GPP参加企業がインターネット上でAI traffic関連情報を展開しており、それら情報によると現状モバイルにおけるAI trafficの割合は増加傾向にあると述べられています。
また、従来のトラヒックとAI trafficの特性の違いとして、主に生成AIの利用によって携帯端末などから送信されるデータ送信比率が通常トラヒックと比べて高いことや、対話型AIのレスポンスタイムの向上を背景とする低遅延要求が強い場合があることなどが各社から主張されています。
今回ご紹介する3GPP標準化の場では、AIの台頭およびそれに伴うAI trafficの増加がどのようにモバイルネットワークへ影響を与えるか、また、影響への対策としてどのようなことを行わなければならないのか、という点を議論しています。
ワーキンググループ議論詳細
ここからは3GPPの各ワーキンググループではAI Trafficについてどのような議論がされているのかご紹介します。
AI trafficはどう扱うべきか?SA2での議論の現状
SA2は主にアーキテクチャの議論を行うワーキンググループであり、今回のSA2会合では事前にAI trafficに関する議論に関してAI trafficの特性を推定したうえでの、ソリューションの提案が入力されました。
たとえば、トラヒックがAIによるものか否か、わかりづらいという現状の課題に対してAIによるものだと判定した場合に、そのことがわかるようなマーカーを付けることなどが提案されていました。

また、会合現地参加を利用し、いくつかの会社にAI trafficについて意見を直接うかがいました。結果としては、一部の会社は、「今後のAI trafficに関して懸念はあるが、現状は影響が小さく、今後どうなっていくか不明なため、今は動向把握が重要」という見解を示す一方、「そもそもAI trafficとはどのような特性を持つもので何が従来のトラヒックとは異なるのか不明であり、議論が必要であるか否かという点から不明」とい見解を持つ会社もありました。
現状、検討はまだ初期段階で、各社共通認識が十分に形成されていない状況です。今後は、AI trafficの特性整理や分類の明確化を進めたうえで、識別やネットワーク制御など、より具体的なソリューション検討が進展する見込みです。
AI trafficの特性とは?SA4での議論の現状
SA4はメディアサービス(音声・映像)の仕様・品質・方式に関連する議論を行うワーキンググループであり、今回のSA4会合ではAI trafficの特性に関して各社から意見が出されました。
会合議論の最終的な結果として、AI trafficの特性としては以下が挙げられました。

一部内容を解説しますと、時間的特性の観点ではAIサービスの利用には特徴づけをすることが困難であり、急に短期間に爆発的なアクセスが発生することが考慮すべき点として挙げられました。また、方向性特性としては生成AIの利用によって携帯端末などから送信されるデータ送信比率が通常トラヒックと比べて高いことから、ネットワークの仕組みをAIのために変化させる必要があるのではないか懸念点が挙げられました。
現状、各社それぞれの考えがあるものの、共通認識は十分に形成されていない状況です。今後は、実験なども介してAI trafficの特性整理や分類の明確化を進め、結果をほかのワーキンググループにも共有する見込みです。
初参加ワーキンググループ感想
今回SA4には初めて現地参加したのですが、普段参加しているSA2とは議論の運び方や焦点の当たる部分などに違いを感じました。
一つは人数です。SA2が約300人規模に対してSA4は約50人規模であり、かなり少人数に感じました。
また、SA2と比較してかなりSA1(要求条件を定めるワーキンググループ)の内容を意識しているように感じました。議論段階から「SA1ではこのように決定しているからこれに従って」という風に議論をしている様子が新鮮に映りました。さらには「ここはSA1ではこう書いているがSA4にはそぐわないのでこのように解釈するのはどうか」という議論が行われるなどSA2ではなかなか見ることがない様々な違いがあるように感じました。
おわりに
3GPP SAにおける AI trafficに関する議論の最新動向をご紹介しました。
私は普段からAI trafficに関して各社動向を調べており、AI trafficに関してのオンライン議論に参加していました。ですが、会合現地で議論を行う機会としては今回が初めてで、あらためて現地で直接意見を伺うことで各社の考えを深く知ることができたと感じています。
ドコモは、引き続き、世界中の技術者と議論を重ね、日本の技術やユースケースを反映させながら、よりよい6Gの仕様策定をリードしていきます。