はじめに
こんにちは!NTTドコモR&D戦略部の上田・杉本・長島です!
私たちのチームはUnreal Engine(UE)を活用したコミュニケーションサービス「MetaMe」において、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を扱っています。
今回は、UGCのリリースを高速化する営みの一環で開発した「スタンプやアバターアイテムなどのデジタルコンテンツのリリースサイクルを大幅に短縮するリリース方式」についてご紹介します。
本記事は以下の3パートに分かれています。
- この新方式を導入するに至った背景や工夫点を書いた技術記事
- その新方式を使ったイベントの実施レポート
- 今後の展望
MetaMeとは
MetaMeとは「ドコモが企画・開発し、パートナー企業であるRelic社が運営するコンシューマ向けコミュニケーション空間サービス」です。
MetaMeではクラウドレンダリング方式を採用しており、3D空間の実行をサーバ側で賄っているため、エンドユーザー側の端末スペックに依存せずサービスを提供できます。


従来のアイテムリリース方式が抱えていた課題
R&D戦略部 上田です!
最初に、技術的な困りごととどうやって解決したかについて簡単に記載します。
MetaMeではAWS上にクラウドレンダリング環境を構築しているため、UEアプリケーション側で何か更新があったときは、Unreal Engineのパッケージを更新した後、AWSにデプロイする必要があります。
つまり、ただ単にアイテムを1つリリースするだけでも以下の作業が発生します。
- UEの中にアイテムデータを取り込む。
- UEをビルドし、パッケージを作る。
- 更新されたUEパッケージをAWSのサーバーにデプロイする。
このプロセスにかかるリードタイムが長く、MetaMeの2週間スプリントのスクラム開発スケジュールにも左右されてしまうため、従来の実績として企画から商用リリースまで約4週間もの時間を要していました。

例えるなら、クリスマス限定アイテムが翌年の1月末にリリースされるようなものです。これに関しては逆算して早期に要件定義すればいい話ではあるのですが、リリースまでのワークフローを短縮できるとユーザーフィードバックの高速化を図れます。 ユーザー視点でも、すぐ作ってすぐ出せる土壌があるとUGCを作るモチベーションの向上につながります。
そのため、アイテムリリースフローの簡略化・高速化の需要は高くなっていました。
今回導入したリリース方式
この課題を解決するため、私たちはUEパッケージにアイテムデータを入れなくても済む仕組みを構築しました。
そもそものボトルネックが「アイテムを追加するたびにUEパッケージを更新する必要がある」ということだったので、アイテム追加時のパッケージングを省略することで都度のデプロイを省くことができます。
具体的な方針としては、アイテムのデータ(IDとテクスチャ)を外部のAWSサービスに格納し、AWS側からUEへ動的にダウンロードする仕組みにしました。
- アイテムID: DynamoDBのデータテーブルに格納
- アイテムテクスチャ: S3に格納
これにより、アイテムIDさえ事前に予約しておけば、あとはUEのパッケージを更新せずともアイテムを追加できるようになりました。

ただ、ひとつだけ制約が残っています。 それは、「すでに作られた型(UVマップ)の色を変えることしかできない」ということです。 たとえば、「半袖Tシャツ」の3Dモデルが既にある場合、この方式で追加できるのは、そのTシャツの「赤色」「青色」「ストライプ柄」といったテクスチャの差分アイテムのみです。
- 適用可能: 既存のTシャツモデルの新しい色・柄
- 適用不可: 新しい形状のアイテム(例:長袖セーター、帽子など)
現状は既存の3Dアイテムの型から逸脱するようなアイテムをリリースする場合に従来通りの長いフローを踏む必要があるため、今回ご紹介したリリース方式の汎用化については今後の課題として取り組んでおります。
イベントを開催してみた
R&D戦略部 長島です!
次は、上述した新方式を使って実際にユーザーにアイテムを作ってもらったイベントをレポートします。
MetaMeでは「アニメDAO」というプロジェクトがあり、毎週MetaMeの配信空間でライブ放送を実施しています。
2025年9月12日の放送回では、先ほど述べた高速リリースの仕組みを使ってライブ視聴者にアイテムを作ってもらいました。

こちらのワークショップでは、リアルタイムで配信を視聴いただいている皆様にテクスチャのテンプレートを配布し、雑談しながら一緒にTシャツの柄をデザインしました。
ライブ放送はXとMetaMeの2媒体で実施し、延べ人数として約80名の方々にご参加いただきました。
提出件数は16件で、その中の投票上位3作品が実施にMetaMeに販売されております!

下の画像は、今回のイベントを実施していく中で見えてきた、各フェーズでの確認事項や各種SNSでの特色早見表です。
イベントの内容や開催方法等によって、みるべき観点は大きく異なることを実感しました。
イベント毎の特色に対応しながら、UGCというユーザーを巻き込んだ営みを活用したイベントの在り方・開催方法を継続して模索していきます。

今後の展望:ユーザー生成コンテンツ(UGC)とファンダムのシナジー
R&D戦略部 杉本です!
皆さんには、いま熱烈に応援しているものはありますか?
アイドルやアーティストなどの人物、アニメやゲームなどのコンテンツ、あるいはプロダクト。あらゆるものが、誰かにとっての熱い気持ちの的になっています。
特定の「推し」を熱心に応援するファンと、同じ推しを中心に集まり情報の共有や発信を行う活発なコミュニティを総称して「ファンダム」と呼びます。このファンダムこそが、私たちUGCチームの活動とシナジーを生むと考えています。
ドコモのサービスを俯瞰すると特にコンテンツを中心とした新しい営みが増加しています。動画配信やアリーナとの連携、IPを生み出す動きも活発で、ファンダムは、会社全体としても注力している分野であると言えます。
従来のファン体験を思い浮かべると、企業からの一方的な情報の享受が一般的でした。コンサート参加、グッズ購入などが代表的な事例で「行って、見て楽しむ」がベースの価値となっていました。しかしSNSの登場により、ファンと企業の双方向のやり取りが拡大し、ファンはハッシュタグによる宣伝を通じて、コンテンツの拡大に自ら関与できるようになりました。
ではなぜ、ファンダムとUGCがシナジーを生むのでしょうか?
前提として、そもそも人はクリエイティブな存在である、と私たちは考えます。大昔から、自らの作った道具で世界を拓き、絵や音楽を作ってきました。そうして作ったコンテンツは一人で楽しむのではなく、フィードバックの中で磨かれ、そこには人が集ったと考えられます。現代でも根底の価値観は変わらず、濃淡はあれど日々誰もが何かを作っています。そして、そこに反応があれば嬉しく思い、同じ興味や目的を持つ仲間ができます。
人が何かを作る過程には、必ず作るものを内面化するステップが生じます。例えば料理をするとき、レシピを理解して、次に手が動く、といった順番をたどります。この時、ただの情報を形にするためにより深い関与がはたらきます。
ファンがUGCを作る行為も同様に、コンテンツを内面化し、作りだす過程を通じて、より深い関与と熱量を育みます。そして、作品が共感を呼べば、そこにコミュニティが生まれます。このように、人が「何かを作る」という行為と、「物事に関与を深める」ことは強い関係があり、結果として「人が集まる」ことにつながります。回りくどい説明になりましたが、ここにファンダムとUGCの結びつきがあると考えます。
したがって、ファンダムやイベントを設計する際には、コンテンツの中にUGC的な営みを効果的に組み込むことが有効だと考えています。軽い参加(テキスト投稿)から重い参加(創作)へと自然に移行できる導線を用意することができれば、ファンの熱量を上げてコミュニティを熱狂的なものにできると確信しています。
今後UGCチームは、メタバース上のイベントを中心にユーザー検証を重ねていきます。そこでは、「どのようなUGCを」「どのようなファン層が行うと」「どのような効果が出るのか」を明らかにしていきます。UGCを前提としたファンダム形成を社会実装へとつなげるため、技術検証と企画の両輪で取り組んでいきます。