NTTドコモR&Dの技術ブログです。

事業計画達成に必要なアクション設計とシャープレイモデルの実践導入

はじめに

NTTドコモデータプラットフォーム部の青山皓太です。

NTTドコモグループでは、2025年度の事業目標達成に向けて、データ活用とDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を軸に、事業成長プランの策定からマーケティング施策の実行、業務変革までを一気通貫で進めています。 特に法人事業やスマートライフ事業の拡大を目指し、AI・IoT・クラウド・セキュリティなどの重点領域でソリューション成長を加速しています。

このような背景のもと、私の所属するデータプラットフォーム部では金融決済事業の計画達成に必要なアクション設計の精度向上と、施策ごとの貢献度を定量的に可視化するために「シャープレイモデル」を導入しました。 本記事では、その導入プロセス・ロジックと導入効果について詳しく解説します。


目次

  1. 事業計画達成に向けたアクション設計の課題
  2. シャープレイモデル導入の背景
  3. シャープレイモデルの概要と分析ロジック
  4. シャープレイモデル導入による具体的な効果
  5. まとめ

事業計画達成に向けたアクション設計の課題

事業計画を確実に達成するためには、具体的なアクション設計が不可欠です、ということは改めて言うまでもありませんが、具体的にアクションに落とせてPDCAサイクルが回るような指標にまで分解することはロジック・時間の両面で難易度が高いのは多くの企業で共通の課題かと思います。

特に弊社のように複数部門で同時期にマーケティング施策が走っている場合、どの施策がどれだけ貢献しているのかを正確に把握することは容易ではありません。事業計画の達成に向けて、どこの部門がなにをどれだけすべきかを定量的に示すために、打ち手ごとの貢献度を明確にする必要がありました。

シャープレイモデルの概念図

※数字は説明上のイメージであり、実際のデータや内容を反映したものではありません。


シャープレイモデル導入の背景

この課題に私は金融決済領域の取扱高の計画を具体アクション設計に落とし込むという場面で直面しました。

新プロダクトや新プランのリリース、業務提携の開始などを横並び比較で、どれくらいの取扱高のリフト効果があるのかを把握することから始めようとしましたが、当然ながら簡単には進めることはできませんでした。 webマーケティングの場合はABテストを行うことでその効果を把握することは多く行われていると思いますが、規模感の大きい取組が多くABテストは行えていないものもある中で、共通ロジックに基づいて処理するものを中々見つけることができませんでした。 途方に暮れていたところにシャープレイというゲーム理論が参考になるのはないかと同僚が教えてくれたことがきっかけです。

シャープレイモデルは、各施策の貢献度をMECE(漏れなくダブりなく)分解し、単体ごとのリフト効果を算出できる分析手法です。これにより、施策ごとの成果を明確にし、より精緻な目標設定と現場でのアクション設計・優先順位付けが可能になると考え、導入トライアルを進めました。

シャープレイモデルの概要と分析ロジック

我々の取組ではシャープレイモデルは、具体的には、以下のような流れで計算処理を行いました。

(シャープレイモデルの概念的な説明資料は多いのですが、実際の計算ロジックの説明が少なく私自身も困った経験があるので、ここでは具体的な計算プロセスを紹介します)

  1. 施策効果の該当あり・なしのグループで、UU数(ユニークユーザー数)と取扱高・単価を計算し、効果の比較ができるビットの組合せ表を作成

    • 例: A施策:あり、なし、B施策:あり、なし、C施策:あり、なし → 8パターンのビット組合せで表作成
  2. ビット間の全組合せに対して単価リフトの計算と、ビット間の重みを計算

    • 例: ビット「A施策あり・B施策なし・C施策あり」と「A施策なし・B施策なし・C施策あり」の単価差分を計算し、A施策の単価リフトを算出、これを全パターン繰り返す  (なお、検証にあたってはリフト効果の算出時に「÷2、加重平均、重心を取る」などの方法をいくつか試して、リフト効果について納得感のあるものを選択しています。)
  3. 全パターンの平均単価リフト×重みから取扱高リフトを計算処理を行う

    • 例: 各パターンの単価リフト×重みを足し上げて、施策ごとの取扱高リフトを算出

シャープレイの計算手順の詳細

取組規模の大きさ=なにを持って施策効果の該当ありと判断するか、この調整がもっともバランス感覚が必要になる部分かなと思います。 打ち手の金額すべて足し上げると、取扱高をはるかに超えることも出てきます。この辺りは運用を見据えての細かい調整を繰り返しながら進めました。 また施策間の時間的な前後関係もリフト効果に影響を及ぼしていると考えられますが、私個人のデータ分析スキルの限界もあり、今回は考慮せずに進めました。

この計算プロセスを通じて、各施策ごとの単体の単価リフトの数値を計算し、貢献度を明確化したのち、最終的には統計的な数字との比較を行いました。

たとえば新プラン加入を行ったお客様の単価リフトの平均値・中央値・分布を確認し、シャープレイモデルで算出した数値と整合性が取れていることを確認し、事業主幹との認識合わせを繰り返しました。


シャープレイモデル導入による具体的な効果

  1. 事業計画に連結したアクション設計とモニタリングの実現

    • シャープレイモデルにより各施策ごとの単価リフト効果が算出できたので、事業計画達成ペースで各打ち手がどれくらいのコンバージョンが必要なのか計算が可能になりました。
    • これにより、打ち手ごとの具体的なアクション設計が可能となり、事業計画に連結したモニタリングが実現しました。
  2. 優先度の意思決定が可能になった

    • 打ち手の貢献成果を定量的に語れるため、どの施策を優先すべきか戦略的な意思決定が可能となりました。
    • 打ち手の貢献金額が大きい順に社内のリソースシフトを検討するに至りました。
  3. 組織間での整合性担保

    • シャープレイモデルで算出した数値を根拠にできるため、部門間の調整稼働が減少しました。
    • これにより、組織間で異なるロジックによる報告の不整合が解消され、意思決定の一貫性が担保されています。
  4. PDCAサイクルの高速化

    • 報告や意思決定の迅速化により、施策効果検証からアクションまでのPDCAサイクルが加速しています。

まとめ

このシャープレイモデルのトライアルから実際に事業部への相談・展開を進め、現在では月次での定常的なモニタリング体制を構築するまでに至っています。 事業計画達成ペースの打ち手の進捗かどうかをマネジメント層と現場で共通理解を持ちながら進められるようになりました。 今後も、データ活用と分析手法の高度化を通じて、事業に好影響を与える取り組みを強化していきます。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。