こんにちは! NTTドコモ クロステック開発部 モビリティデータ活用技術開発担当の三浦です。
NTTドコモでは、8/25〜9/5に現場受け入れ型インターンシップを実施しました。本インターンシップはリモートと現地のハイブリッド形式での開催となり、参加者は各チームに配属された後、2週間の業務体験をしていただきました。
今回は、私が所属するチームにインターンとして参加された村山さんに体験記を書いていただいたので紹介したいと思います!
はじめに
8/25~9/5の現場受け入れ型インターンシップに参加させていただいた村山 友貴です。大学院の研究室では、強化学習を用いた幼児の行動解析に関する研究に取り組んでいます。本記事では、インターンシップで取り組んだ「エコ行動促進アプリ『カボニューレコード』のプッシュ配信のデータ分析」の業務体験について記載します。
参加目的
私がインターンシップに参加した目的は、大きく分けて3つあります。
① 大学と企業における研究開発の違いについて理解するため
現在、大学院では強化学習を用いた研究に取り組んでおり、将来的には機械学習を活用した研究開発業務に携わりたいと考えています。大学での研究は、理論的な新規性が重要視される一方、企業では技術の社会実装やユーザー価値の創出といったビジネス的視点が求められることを知りました。そこで、本インターンシップでは、実際に研究開発現場で業務に携わることで、技術がどのように社会実装され、ユーザー価値へと変換されていくのかを体感したいと考え、参加しました。
② チームでの開発の進め方を学ぶため
大学院での研究は基本的に個人でテーマを進めることが多く、チームでの開発経験が限られていました。そのため、企業の研究開発現場において、チームでプロジェクトを推進する際の進め方やコミュニケーションの取り方を実際に体感し、理解を深めたいと考えました。
③ 大規模データ分析に取り組むため
現在、研究では幼児の行動データを用いた行動解析に取り組んでいますが、データ数が限られていることが課題となっています。そこで、実際に運用されているアプリケーションから得られる大規模かつ多様な実データに触れることで、より実践的かつ応用的なデータ分析スキルを磨きたいと考えました。
業務内容
背景
NTTドコモでは環境に配慮した取り組みの一環として、エコ行動記録アプリ「カボニューレコード」を提供しています。 カボニューレコードは、毎日のエコ行動を簡単に記録でき、その行動によるCO₂削減量をわかりやすく可視化することで、お客様の継続的なエコ活動を後押しするアプリです。
カボニューレコードでは、お客様のエコ活動を最大限サポートするための最適な通知手法を模索しており、定期的に配信を実施しています。 本インターンではその一環として実施した、2025年8月25日の配信データを対象に、開封率や行動変容への影響について詳細な分析を行いました。
8/25の配信内容
8/25の配信では、過去に実施した複数施策の有効性をユーザーごとに推定し、推定結果に基づいて配信文言を選択する方法で配信を実施しました。 本施策では、思考特性や各種サービスの利用状況(許諾済みユーザーから取得)等の「ユーザー情報」とカボニューレコードでのエコ行動回数やエコ行動種類等の「アプリ履歴」を入力として、3つの施策の有効性を判定し配信文言を決定しました。
複数施策の有効性推定については、施策あり/なしのそれぞれの場合に対する開封率予測モデルを構築し、予測開封率を比較することで実施しています。
8/25のPUSH配信では、お客様のエコ活動を最大限に支援できる通知の在り方を検討するため、文言の選び方が異なる2つの配信方法を比較しました。 具体的には、施策の有効性推定に基づいて最適な文言をお届けするグループAと、文言をランダムに選択しお届けするグループBの結果を比較し、どちらの配信方法がお客様のエコ行動をより後押しできるかを確認しました。
業務体験報告
1. PUSH配信の開封率分析
カボニューレコードにおけるエコ行動を促進するPUSH配信について、ユーザーがどの程度開封しているかを、8/25に配信されたデータを用いて分析しました。プッシュ配信のメッセージは、ユーザーの属性や行動履歴に基づき、各施策の有効性モデルを用いて最適化して配信した群(グループA)と、メッセージをランダムに配信した群(グループB)に分けて開封率を比較しました。さらに、ユーザーのエコ行動記録状況に応じて「アクティブユーザー」と「非アクティブユーザー」に分類し、より詳細な分析を行いました。ここでのアクティブユーザーの定義は、8/1から8/24の間にエコ行動の記録があったユーザーです。
2. エコ行動記録回数の増減分析
毎月25日に実施されている「ユーザーのエコ行動を促進するプッシュ配信」が、実際にエコ行動回数にどの程度影響を与えているかを検証するため、プッシュ配信日の前週同曜日との比較分析を行いました。
上記の結果から、プッシュ配信を開封したユーザーにおいて、前週同曜日と比べて、平均約1.5回分のエコ行動回数の増加が確認されました。 しかしながら、プッシュ配信のメッセージをユーザーの属性や行動履歴に基づいて各施策によって最適化して配信した群(グループA)とメッセージをランダムに配信した群(グループB)との間では、エコ行動回数の増加に有意な差は見られませんでした。
次に、先ほどの分析で、8/18と8/25の間に平均エコ行動回数に大きな変化が見られなかったため、8/18から8/25までの期間について、1日ごとのエコ行動回数を分析しました。
上記のグラフより、特に8/18、8/20、8/24、8/25において、8/25に配信されたプッシュ通知を開封したユーザーの平均エコ行動回数が高い傾向にあることが、確認されました。 このことから、毎月25日に実施されているエコ行動促進のためのプッシュ配信に加え、同一アプリ内で別のプッシュ配信が別日に配信されていた可能性があると考えられます。その影響により、8/18および8/25の平均エコ行動回数が約1.5回程度にとどまったのではないかと推察されます。
3. 推定モデルの改善
施策有効性を推定するために使用する開封率予測モデルの精度改善に取り組みました。評価手法としては、開封率モデルの予測値が0.5以上であれば「開封」、0.5未満であれば「未開封」と判定し、8/25に配信されたプッシュ配信の実際の開封データと比較して正解率を算出しました。 今回の取り組みでは、モデルの特徴量の削減および追加を通じて、予測精度の向上を目指しました。特徴量の候補は約760個あり、その中から予測に寄与した特徴量上位10%だけを使用しましたが予測精度は変わりませんでした。この結果より、特徴量を削減することでモデルの簡素化や計算コストの削減が実現可能であることがわかりました。次に、前月のプッシュ配信開封有無と前月のエコ行動の連続継続日数を特徴量として追加しました。この結果、下の表で示すように、予測精度が向上し、過去のプッシュ配信の開封有無や継続的なエコ行動記録の有無はプッシュ配信の開封率予測モデルに有効であることがわかりました。
今後の課題
①非アクティブユーザーへのアプローチの工夫
今回分析してみて、非アクティブユーザーに対するプッシュ配信効果が限定的であることが確認できました。より多くのユーザーの行動変容を促すには、非アクティブ層に対して有効な施策を考案・実施する必要があると感じました。
②プッシュ配信頻度と行動変容効果に関する検証
今回の分析では月 1 回のプッシュ配信を対象に検証しましたが、ユーザーの利用状況や反応特性は多様であり、最適な配信頻度も個々に異なる可能性があります。配信頻度の最適化によってエコ行動がどこまで促進できるのかは検証する価値があるのではないかと感じました。
③新規ユーザーや低アクティブ層に対する開封率予測精度の向上
開封率予測モデルに関して、追加特徴量(過去のプッシュ配信実績や継続的なエコ行動記録有無)によりアクティブユーザーの予測精度は向上した一方で、利用履歴が少ない低アクティブ層では効果が限定的であり、別のアプローチが必要であると考えます。
インターンシップを振り返って
参加した感想
2週間という限られた期間ながら、非常に密度の濃い、充実した経験を積むことができました。毎日、トレーナーの方との業務内容に関する情報共有や意見交換の機会を設けていただき、コミュニケーションの重要性や多角的な視点を持つことの価値を実感することができました。また、自身の考えを伝えることで新たな気づきや的確なアドバイスをいただき、結果として円滑に進めることができました。
参加目的の達成度
企業の研究開発現場に携わることで、技術が社会に実装され、ユーザー価値へと変換されるプロセスを具体的に体感でき、理論中心の大学院研究とは異なる実践的な視点を獲得できました。
個人での研究とは異なり、日々の進捗共有やミーティングを通じて、チームで成果を生み出すためのコミュニケーションの工夫、スケジュール管理、協調性といった実務的な開発スキルを身につけることができました。
実際に運用されているアプリケーションの大規模なユーザー行動データを扱うことで、実務レベルでのデータ前処理、特徴量設計、モデル評価の経験を積み、分析結果の実用性や示唆の活用といった応用的なデータ分析の視点を習得しました。
最後に
2週間にわたり多方面からサポートをしていただいた受け入れ上長の山田さん、トレーナの塚本さん、三浦さんに心より感謝申し上げます。また、インターン期間中に貴重なお話を聞かせていただいた社員の皆様にも深く感謝申し上げます。皆様が温かく接してくださり、業務内容に加えて多くの学びや気づきを得ることができ、非常に充実した2週間となりました。
トレーナーからのコメント
村山さん、2週間の業務体験お疲れ様でした!
村山さんに取り組んでいただいたエコ行動記録アプリの分析は、ドコモの顧客基盤データと技術を活用し、人々の行動変容を支援して社会課題の解決を目指す、社会的意義の高い取り組みです。 2週間という短い時間の中で、開封率やエコ行動記録のデータ分析、配信の出し分けモデルの精度改善など、多くの挑戦を主体的にやり遂げていただきました。とても素晴らしい成果を出していただいたと思っています!
NTTドコモでは、
- 技術で社会をより良くしたいと考えている方
- 自身の得意な技術領域でチャレンジしたい方
など、技術に熱い思いを持つ方のインターン参加をぜひお待ちしてます!