NTTドコモR&Dの技術ブログです。

100日後にITアーキテクトになる文系おじさん ~Microsoft Copilotを武器にキャリアチェンジへの挑戦〜

はじめに

この記事はこんな人向けです。

  • 技術系部門へのキャリアチェンジや、職種転換を考えている人
  • 「今さら技術なんて」と、年齢を理由に挑戦を躊躇している人
  • 非エンジニア出身者が、どうやって「技術的な意思決定」に関われるのか興味がある人

サマリ

  • 企画マーケティング・総務人事畑だった私が、ある日突然「ITアーキテクト職」へ
  • 立ちはだかる「技術の壁」も、Microsoft Copilotを「技術顧問」にして攻略
  • AIがいれば、年齢やバックグラウンドは挑戦の障壁にはならない

「文系出身おじさん」が、ITアーキテクト?

こんにちは。NTTドコモ 情報システム部の伊藤です。
今年のある日突然、私は ITアーキテクト職 へ人事異動することになりました。 これまでドコモグループで企画・マーケティング・総務人事を主に経験してきて、その後エンジニア部署に在籍経験はあるものの、担当はあくまで組織運営。「開発ど真ん中」の経験はありません。そんな私が、可用性・信頼性を支える全体アーキテクチャを描き、セキュリティ境界やSLOまで考慮して技術的な意思決定を下すITアーキテクトになれるのか? 正直、不安しかありませんでした。

着任早々、会議では容赦ない言葉が飛び交います。
「IaCのドリフト是正を...」「AWS Compute Optimizerの推奨通りAuroraを最適化して...」
当時の私には呪文にしか聞こえません。
何がわからないのか、すらわからない」。そんな絶望的なスタートから100日。 私がどうやって「アーキテクトとしての視座」を獲得し、チームの議論に参加できるようになったのか? そこには、社内データを安全に取り扱える生成AIツールとして使われているMicrosoft Copilotの存在がありました。

立ちはだかる「技術の壁」を突破する

ITアーキテクトの仕事は、単にコードを書くことではありません。顧客要求を実現するためのグランドデザインを描き、システム全体の最適化戦略を策定することです。 そこで、Microsoft Copilotを「検索ツール」としてではなく「技術顧問」として活用する戦略をとり、以下のステップでこの壁を突破していきました。


【Step 1】会議で「技術的意思決定」を学ぶ

最初は会議についていくのが精一杯です。しかし、アーキテクトに求められるのは「理解」の先にある「判断」です。 TeamsでトランスクリプトをONにし、Copilotに議事録を作らせるだけでなく、「判断のための材料」を抽出させるようにしました。

▼ 使用したプロンプト例

・この会議の結論はどうやって導かれましたか。 A案とB案のメリット・デメリットを、コストと将来性の観点から比較表にしてください
・この決定において、見落とされているリスクがあれば、シニアエンジニアの視点で指摘してください
・決定事項をエンジニア向けのタスクに分解し、それぞれの完了条件を作成してください

このような感じで「言葉の意味」と「判断の根拠」を静かに学んでいきました。

【Step 2】障害対応から「全体最適」を学ぶ

システム障害はアーキテクチャの弱点を知るチャンスでもありました。しかしリアルタイムでSlackに流れる大量の障害対応ログを眺めているだけでは何が起きているのかわかりません。Microsoft Copilotにコピペし、事象を構造化して理解するようにしました。

▼ 使用したプロンプト例

・以下はSlackの障害対応スレッドです。時系列で事実を整理し、『根本原因』と『暫定対処』を明確に分けてください
・今回の事象は、アーキテクチャのどの部分の脆弱性に起因していますか? クリティカルな部分を中心に、初心者にもわかるように解説してください
・再発防止策として、ITアーキテクトが提案すべき案を3つ挙げてください

こうして熟練エンジニアが見ている景色(システム全体の依存関係)をリアルタイムで追体験できるようになりました。

【Step 3】知見を資産化する

せっかくCopilotで学んでも、悲しいかな、おじさんの記憶力には限界があります。さらに、ITアーキテクトには「チームメンバーの育成」も求められます。 そこで、Microsoft Copilotとの対話ログや社内ルールを体系化した「My Copilot Dictionary」と名付けたナレッジベースMicrosoft OneNote に構築しました。

▼ 使用したプロンプト例

・(過去の対話ログに対して)テーマごとに整理・一覧化し、新規参画メンバーへのオンボーディング資料として使える構成にしてください
・OneNoteの『My Copilot Dictionary』を知識ベースとして参照し、今回の質問に対する回答案に反映させてください

過去のMicrosoft Copilotとの対話ログをOneNoteに整理し、そのOneNoteを参照してMicrosoft Copilotと対話を行う。これを繰り返すことで、私の手元には「自分だけの辞書」だけではなく、「新規参画するメンバーに向けたナレッジ」も育っています。


100日後に見えた景色

この使い方においては、Microsoft Copilotは十分に技術顧問となってくれました。 そして100日が経った今、私は胸を張って「ITアーキテクトです」と言えるか? 正直、私の技術的な深さはまだまだです。しかし、

  • 初見の技術用語に直面しても怖くなくなった
  • 「理解できる領域」と「専門家の助けが必要な領域」の線引きができるようになった
  • ビジネス要件をシステム要件に翻訳する際の「解像度」が劇的に上がった

という、アーキテクトとしてのスタートラインには立てたと感じています。

そして現在は、システム運用の「熟練エンジニアの暗黙知」を形式知化 → 自動化し、チーム全体の生産性を向上させるという新たなミッションに挑戦しています。その過程でも、Microsoft Copilotを「技術顧問」としてフル活用しています。

キャリアチェンジを考えている人へ

今回の100日を振り返って自信を持って言えるのは、 「AI時代において、年齢やバックグラウンドは挑戦の障壁にはならない」 ということです。 技術的な知識の欠落は、AIがある程度埋めてくれます。 そうなった時、文系職種で培ってきた力を技術系部門でしっかり生かせる場面がたくさんあります。例えば、

  • 顧客体験(CX)をどう設計するか
  • ビジネス要件をどう噛み砕き、開発チームに伝えるか
  • メンバーが最大限パフォーマンスを発揮できる環境をどう作るか

こうした視点も、開発エンジニアやITアーキテクトという職種にとって不可欠だと考えています。「文系おじさん」にもITアーキテクトとしてお役に立てる経験がある。今はそう思って勉強する日々です。

もし、あなたがキャリアの方向性に迷っているなら── AIという最強の武器がある今、挑戦のハードルは確実に下がっています。 Microsoft Copilotとともに新しい世界へ飛び込んでみませんか?

そこは意外と、あなたの得意領域かもしれません。