NTTドコモR&Dの技術ブログです。

BizDevOpsできてる?:チーム力向上に向けた取り組み

はじめに

こんにちは、NTTドコモの角野です。情報システム部でスマホアプリの開発を担当しています。

私の担当部署には、私が担当するスマホアプリの開発チームのほかにも、さまざまなサービスのシステム開発を担う10以上のチームが所属しています。これらのチームは横断で定期的に課題や良い取り組みを共有し、互いにスキルを高め合う活動を行っています。

今回は、その中でもチームのBizDevOpsを向上させるために実施している取り組みについてご紹介します。

本記事は、開発チームのBizDevOps推進に関心のある方や、組織内での導入・改善施策を検討されている方を対象としています。私たちの取り組みを通じて得られた効果や課題を共有し、皆さんの参考になれば幸いです。

BizDevOpsできてる?

この取り組みは、約3年前に担当部署で「BizDevOpsの強化」を目標に掲げたことをきっかけに始まりました。BizDevOpsを強化すると一言で言っても、概念的には理解できても明確な定義がなく、「具体的に何をすればよいのか?」という点は人によって捉え方が異なります。

そこで、まずは担当部署の目標を達成するために必要なことを整理し、担当内のメンバー3人で検討を始めました。

BizDevOpsとは?

改めて基本から触れておくと、BizDevOpsとはビジネス(Biz)・開発(Dev)・運用(Ops)を一体化させる考え方です。 従来のDevOpsにビジネス部門を加えることで、技術的な改善だけでなく事業価値の最大化を目指します。 ビジネス戦略と開発・運用の現場を結びつけ、顧客価値を迅速に届ける仕組みを作ることが特徴です。 さらに、KPIやOKRといったビジネス指標を技術的なメトリクスと合わせて追跡し、継続的な改善につなげていきます。 つまりBizDevOpsは、組織全体で「価値を届けるスピードと質」を高めるためのアプローチです。

どのくらいできているかを測るには?

BizDevOpsを進める上で最初に悩んだのは、「何ができていれば達成できていると言えるのか?」という点でした。 概念的には理解できても、具体的な評価軸がないとそれぞれのチームで具体的に何を目指すべきかがわからなくなってしまいます。そこで私たちは、世間一般で使われている指標を調査し、まずは共通のものさしを持つことから始めました。

技術面の指標(DORAメトリクス)

DevOpsの達成度を評価する上で最も有名で標準的に使われている指標は、Google Cloudが提唱する「DORAメトリクス」です。これは世界的に最も認知度が高く、信頼されている指標群です。

  • デプロイ頻度(どのくらいの頻度でリリースできているか)
  • 変更のリードタイム(コード変更から本番リリースまでの時間)
  • 平均復旧時間(MTTR:障害から復旧までの平均時間)
  • 変更失敗率(リリース後に障害やロールバックが発生する割合)
    DORAメトリクス
    これらは技術的な俊敏性や安定性を測るための基本指標であり、BizDevOpsでも基盤となります。

組織・文化面の指標

BizDevOpsの本質は部門間の連携にあり、組織文化の成熟度も重要な観点です。DORAでは、ソフトウェアデリバリーのパフォーマンスを高めるための27の実践能力をDORAケイパビリティとして定義しており、技術・プロセス・測定・文化などの観点で整理されています。これらを定期的に振り返ることで、チーム全体が「価値を届けるスピードと質」を高める方向に進んでいるかを確認できます。

具体的にやったこと

チーム力評価

DORAメトリクスの4指標は達成基準が明確なので定量的な評価ができるのですが、DORAケイパビリティは達成基準が定量的に定義されていないため、同じ基準で評価するのは困難です。 そこで、どのように評価すればよいかをメンバーで議論したのですが、特に文化面は幅が広く、何ができていれば良いのか、定量的な評価基準を決めるのは非常に難しい状況でした。人によって重視する点が異なるため、共通して納得できる基準を作ることができず、議論を重ねるほど様々な視点が出てきて、出口が見つからない状態となりました。

そもそもこの取り組みの目的は、チームの現状を可視化し、チーム力を改善していくことにあります。そこで、標準的な基準にこだわるのではなく、それぞれのチームが現状をどのように捉えているかを明確にすることから始めました。結果として、未達成・課題あり・達成済みの3段階で主観的に評価してもらうことにしました。また、課題がある場合に、今後の目標として改善してもらうことを意識してもらうために、目標についても3段階で記入してもらうこととしました。

評価する観点については、DORAのケイパビリティを参考に、担当内で現状考慮すべき項目を抽出し、28項目について評価を行いました。また、その際には、定性的にできていることや課題についてコメントを記載してもらい、改善点を明確にすることで、具体的なチーム力向上につなげることを重視しました。 現状を評価してもらうため、以下の評価シートを用意し、担当内にある開発チームに現状の評価を記入してもらいました。

評価シート

できたこと共有

各チームで現状の評価が終わったところで、評価シートの内容を集約し、チーム横断でできていることを共有する会を開催しました。 課題をかかえているチームが、うまくいっているチームの取組みを参考にするための取り組みです。

この場では、単なる結果の報告をするのではなく、「なぜうまくいったのか」「どのような工夫をしたのか」を具体的に説明してもらうようにしました。

改善の計画・実践

現状のチーム力を評価した際にでてきた課題については、他チームの事例も参考にしつつ今後の達成目標をたててもらい、改善に向けた取り組みを実践していただきます。一定期間がたったあとで、再度同様にチーム力の評価を行い、改善目標が達成した場合には、できていることを他チームに対して共有していただくという流れで、チーム横断でチーム力の改善をはかっていきます。この取り組みで当初の評価した結果と、直近の評価結果を比べると、チームによって成長の度合いは異なるものの、おおむね評価は高くなっており、チーム力が向上していることが分かりました。

取り組みの流れ

取り組んでみて思ったこと

BizDevOpsができているかどうかを問われた場合、DORAメトリクスのように定義が明確であれば、標準的な基準をもとに目標設定や評価が可能です。しかし、特に組織や文化面の曖昧な観点については、どうしても定性的かつ主観的な評価にならざるを得ず、各チームが何を評価し、どのように扱うかを考えるのは難しい課題でした。仮に一定の基準を設けて、チームの達成度を数値で横並びに評価したとしても、各チームの状況は異なり、単純に数値を上げることが目標になるとは限りません。

そこで、今回の評価では、自分たちのチームで「できていること」「できていないこと」を考え、課題改善に取り組むことを主旨とし、横並びで評価の高低を比較するものではないことを大前提として伝えました。その結果、各チームが素直に評価できたと感じています。チームごとに置かれている状況は異なりますが、各観点について単純に課題の有無で評価してもらうことで、何が課題で何をすべきかを考えるきっかけになったと思います。 評価の値はあくまで当事者の感覚によるものですが、「できている」と評価したチームが具体的にどのような取り組みをしているかを共有してもらうことで、他のチームと自分たちの状況を比較し、自チームの課題や達成目標の基準を見極める参考になったと考えています。

また、それぞれの観点で何ができていればよいかは、時期や状況によって変化するため、評価基準を設けた場合は定期的に基準をアップデートする必要があります。そのため、一律の基準を決めて評価するよりも、今回のように現状何ができていればよいかを各チームで考えるほうが、柔軟に目標を更新でき、取り組みを継続しやすいと感じました。

今後のBizDevOpsは?

私たちの担当で使用しているBizDevOpsの評価項目は、2年以上前に検討したものですが、 BizDevOpsの本質的な課題に対応した不変的な観点であるためこれまで大きな見直しは行ってきませんでした。 しかし、近年のAI導入の流れなどにより、BizDevOpsの分野でも変化が生じています。そこで、今後の評価では、最新の状況に合わせて新たな観点も追加していきたいと考えています。

DevOpsのトレンド

最近は従来の「開発と運用の連携」からさらに進化し、AI活用・ビジネス価値連動・プラットフォーム化がキーワードになっています。以下に代表的な活動について紹介します。

DORA AI Capabilities Model

2025年版のDORAのレポートでは、従来の「DORAケイパビリティ」に加えて、生成AI時代に対応した新しい枠組み「DORA AI Capabilities Model」が発表されました。AI支援型ソフトウェア開発に必要な以下の7つの能力が提示されています。

  • Clear and Communicated AI Stance(AI活用方針の明確化と共有)
  • High-Quality Internal Platforms(社内プラットフォームの品質向上)
  • Workflow Clarity(ワークフローの明確さ)
  • Team Alignment(チームの連携強化)
  • Responsible AI Practices(責任あるAI利用)
  • Continuous Learning with AI(AIを活用した継続的学習)
  • Measurement and Feedback Loops(成果測定とフィードバックの仕組み)

(参考:2025 年 DORA レポート: AI 支援によるソフトウェア開発の現状 | Google Cloud 公式ブログ

NG-DevOps(Next Generation DevOps)

従来のDevOpsにAI(人工知能)や自動化技術を組み合わせ、開発から運用までのライフサイクルをさらに効率化・高度化する新しいアプローチです。 AIによるコードレビューや障害検知、自律的な運用を実現し、技術KPIだけでなくビジネス価値も評価します。さらに、標準化されたセルフサービス型プラットフォームを提供します。(参考:APPSWINGBY

Agentic DevOps

Agentic DevOpsは、AIエージェントを開発プロセスに組み込み、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を自律的に最適化する次世代のDevOpsモデルです。 特徴としては、自律的な意思決定(Autonomous Decision Making)、自己修復インフラ(Self-Healing Infrastructure)、予測と最適化(Prediction and Optimization)、自然言語での操作などがあります。従来のDevOpsが「自動化」に焦点を当てていたのに対し、Agentic DevOpsは「自律性」と「意思決定」を重視します。(参考:Agentic DevOps: Evolving software development with GitHub Copilot and Microsoft Azure | Microsoft Azure Blog

Platform Engineering

セルフサービス型の内部開発者プラットフォーム(IDP)を構築し、ツールチェーンやワークフローを統合して提供します。IDPは、CI/CD、IaC、モニタリング、セキュリティなどを標準化し、開発者が迅速に安全な環境を利用できるようにします。目的は、開発スピードの加速、属人化の防止、コスト効率の改善です。 (参考: Gartner Japan. プラットフォーム・エンジニアリングとは何か?

上記のトレンドにあるように、DevOpsにAIを活用することで、予測・自動化・最適化の観点で大きな改善が期待できます。例えば、障害予測と自動対応、CI/CDパイプラインの効率化、コードレビューやセキュリティ脆弱性検出の自動化、リソース使用量の予測と最適化、ログ解析による異常検知、テストケース生成、インシデント対応の高度化などが可能となり、運用のスピードと品質が飛躍的な向上が見込まれます。

今後はAI導入を前提とし、AIを最大限活用するための開発環境の構築、チームの連携強化、さらなる学習の文化の醸成などを考慮し、チーム力向上に向け観点をアップデートしていきたいと考えています。

さいごに

あなたのチームはBizDevOpsができていますか? このような問いに対して、チーム力をどのように評価し、どのように向上させていくかについて、私たちが実際に取り組んだ内容をご紹介しました。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

チーム力の向上について考えている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。