NTTドコモR&Dの技術ブログです。

10月RCS研究会で6Gに向けた無線通信の研究について発表してきました!

はじめに

こんにちは、6Gテック部無線アクセス技術担当 林 優太、毛利 檀、張 裕淵です。

今回は、10月23日、24日の2日間で静岡県伊東市にて開催された無線通信システム研究会(RCS研究会)において、6Gに向けた無線技術の研究テーマのうち,可視光通信やNRNT,ミッドバンドをテーマとした発表を行ってきたので,その様子と検討内容についてご紹介します!

目次

RCS研究会

RCS研究会では、無線伝送や無線アクセス技術、システム構築、ネットワーキング技術、無線通信理論など無線通信システムに関する研究発表・報告・議論を行う場として、毎月テーマを変えながら開催されている学会となります。今回の研究会では、第6世代移動通信システム(6G)に向けた取り組みとして、ビームフォーミングなどの制御面の検討や、可視光通信のような新たな伝送方法の検討、海中通信の検討など多岐にわたるテーマが扱われていました。ドコモからは林、毛利、張の3名が参加し、それぞれ以下のテーマで発表を行いました。

  • ミッドバンドの利用に向けたシミュレーションによる伝送特性評価(林 優太)[1]
  • NRNTビームフォーミング最適化の高速化(毛利 檀)[2]
  • 可視光通信のNRNTへの融合のシミュレーションによる検討(張 裕淵)[3]

技術概要

1. ミッドバンドの利用に向けたシミュレーションによる伝送特性評価(林 優太)

ミッドバンドの利用に向けたシミュレーションによる評価まとめ
背景

6Gでは、超高速・大容量通信の実現のために100 GHz以上のサブテラヘルツ帯の利用とともに7~24 GHz帯のミッドバンドの利用が検討されています。ミッドバンドは、5G周波数帯であるSub-6よりも広い帯域幅の確保が期待されているかつ、ミリ波よりも低く周波数帯であることから、高速・大容量通信を可能にしながら広いカバレッジを実現することができます。 ドコモとしても、新たな周波数帯の利用に先駆けて、ミッドバンドを使用した際にどのような通信を提供できるのか、評価を行う必要があります。

検討内容

今回は実用化を見据えて、ミッドバンドを横須賀市街地に展開したときに、どのようなスループット特性を示すのかシミュレーションベースで評価を行いました。また、市街地環境の電波伝搬情報やビームフォーミングの結果より、ミッドバンドに最適なビーム制御方法を確立するための初期検討を実施しました。

結果・示唆

ミッドバンドを用いることで、5G周波数帯であるSub-6よりも高スループットを得ることができ、安定した通信を提供することが可能であることがわかりました。また、ビームフォーミングの効果は大きく、ミッドバンドにおいても高速・大容量通信を行う上で重要な技術であることを確認しました。実用化を見据えて、引き続き評価を進める予定であり、複数基地局・端末でのシミュレーションを考えています。

2. NRNTビームフォーミング最適化の高速化(毛利 檀)

NRNTビームフォーミング最適化の高速化まとめ
背景

ドコモは6Gに向けた無線通信の高速化・大容量化に向けた技術コンセプトのひとつとして「NRNT(New Radio Network Topology)」を掲げています。 今年8月5日の本ブログ記事に記載した通り、NRNTにおいて複数の無線経路をつくって高速・大容量化するためには各デバイス(のアンテナ)のビームの組合せをしっかり決めることが重要です。 しかし、NRNTでは制御するデバイス数(アンテナ数)が急激に増えるため、単純なアルゴリズムで制御を行っていると組合せを決めるための計算量や制御通信量がデバイスの数に対して指数関数的に増大してしまいます。

nttdocomo-developers.jp

検討内容

今回は、複数のアンテナのビームの組合せ最適化問題を効率的に解くためのひとつの方法としての連続緩和手法について発表しました。ここでは、提案手法について概要を説明します。詳細は参考[2]をご覧ください。 まず、ビーム組合せの集合を正実数ベクトルの集合に埋め込みます。これによって離散問題であるビーム組合せ問題が連続問題に翻訳できるため、評価関数(MIMO容量)の勾配を使った最適化手法(再急降下法など)を適用して問題を高速に解くことができます。

結果・示唆

提案手法によって,指数関数的に増大してしまうビーム組み合わせに対して数回程度の繰り返し回数で最適な組み合わせを導き出すことができ、NRNTで無線経路を増やしながらも計算量や制御通信量を抑えることが可能となります。これにより、現実的な時間でNRNTのビームフォーミングを行えることが期待できます。現在のアルゴリズムは非凸最適化問題であり局所解に陥っているといったいくつかの課題があるため、今後の検討においてより効率的な手法を展開していく予定です。

3. 可視光通信のNRNTへの融合のシミュレーションによる検討(張 裕淵)

可視光通信のNRNTへの融合のシミュレーションによる検討のまとめ
背景

6Gでは最大100Gbpsを超える超高速・大容量通信が求められ、空間領域に分散された新たな無線ネットワークトポロジー(NRNT: New Radio Network Topology)の構築によって、高周波数帯の利用が容易になり、この条件を満たすことが可能とされています。一方、電波ではなく可視光を用いた可視光通信(VLC: Visible Light Communications)はIEEE 802.11bb-2023(Li-Fi: Light Fidelity)で標準化され、極めて高いデータレートを提供することが期待されています。しかし、光を用いるため、VLCは伝送距離が短く、カバレッジが制限されるという課題があります。VLCの利便性を向上させるため、本研究では、6GにおけるVLCのNRNTへの融合を提案します。移動通信システムと可視光通信のより高度な融合により、柔軟性を含むシステム性能の向上を目指します。

本研究についてはExpressセッションにて発表を行いました。Expressセッションでは、新しい研究分野や技術についてアイディアや問題提起をする行う場であり、6Gの要求条件を満たすための新しい切り口としてVLCの提案を行いました。

検討内容

今回は展示会場におけるシナリオを計算機シミュレーションによって評価しましたので、その結果を発表しました。この結果を通じて提案方式の有効性を示しました。検討した展示会場は正方形で、横幅90 m、高さ15 mです。Radio APは展示会場の天井に分散設置されており、近隣の両壁からの距離は15 mです。VLC APは会場中央に設置されており、VLC素子の高さは5 mです。ユーザ端末(UE)がVLC素子のエリアに入るとVLC通信が行われ、光の信号対雑音比(SNR: Signal-to-Noise Ratio)に基づき、VLCのスループットが計算されます。本シミュレーションでは、電波通信および可視光通信の下り回線(DL)における受信電力とスループットを計算します。

結果・示唆

電波を用いた無線通信による案内によって、UEはVLCの受信エリアまで移動でき、その結果、VLCを利用した超高速通信サービスを受けることが可能になります。また、電波による無線通信はVLCへのオフロードにより接続しにくいエリアが減少し、システム全体の通信性能が向上します。

発表の様子

約20分持ち時間があり、その中で発表と質疑応答を行います。質疑応答では活発な技術議論が行われ、3名の発表においても多くの質問をいただきました。

発表風景①(林 優太)
発表風景②(毛利 檀)
発表風景③(張 裕淵)

おわりに

6Gの実現に向けて、企業や大学、研究機関がさまざまな切り口で研究を進めています。これらの取り組みは、より良い通信を実現し、皆さまの生活をもっと豊かにするための重要なステップです。私たちも、引き続き通信の発展のために技術を追求し続けていきたいと思います!

参考

  1. 林優太,富永貴大,須山聡,毛利檀,張裕淵,蒋恵玲,“カラーイメージ法とリンクレベルシミュレーションによる横須賀市街地におけるミッドバンドMassive MIMOの伝送特性に対する一考察”,信学技報,RCS2025-132,Oct.2025.
  2. 毛利檀,須山聡,張裕淵,蒋恵玲,“[奨励講演] RISを活用した6Gシステムにおけるビーム選択法”,信学技報,RCS2025-127,Oct.2025.
  3. 張裕淵,須山聡,蒋恵玲,“6G移動通信における可視光通信のNRNTへの融合のシミュレーションによる検討”,信学技報,RCS2025-137,Oct.2025.