はじめに
こんにちは!ドコモ 6Gテック部の黒岩です。普段は、3GPP国際標準化活動に従事しております。
今回は、ネットワークの裏側で毎日行われているデータ収集のお話です。 スマホで動画を観たり、アプリを使ったりしているとき、ネットワークは膨大な情報をやり取りしています。安定した通信を届けるため、ネットワーク内部では、機器やソフトウェアの状態を常に見える化するためのデータを収集しています。
特に高度化が進むモバイルのコアネットワークにおいて、分析の材料となるこのデータ収集は極めて重要です。5Gでは、各ネットワーク機能間で情報をやり取りする機能が提供されています。
本記事では、
- 5Gで整備されたデータ収集の仕組み
- それが6Gでどう進化しようとしているか
を、身近な例やユースケースを交えて解説します!
【この記事でわかること】
- ネットワークが混雑しないように、なぜデータ収集が必要なのか
- 5Gで必要な情報だけを集める仕組みがどう整ったのか
- 6G では増え続けるデータに対応するため、より柔軟で安全なデータ収集の仕組みが検討されていること
なぜ、そんなにデータが必要?を身近な例で
道路を思い浮かべてみてください。
渋滞や工事情報がわかっていれば、ルートを変えたり出発時間を調整したりできますよね。
ネットワークも同じで、
- どこが混んでいるか
- どのサービスが負荷をかけているか
を把握できると、対策を打つことができます。
そのため、それぞれの経路がどれくらい混んでいるか、機器の負荷状況に問題が無いか等、状況把握のためにデータを集める必要があります。

この状況把握のために、5Gではコアネットワーク内のさまざまなネットワーク機能からデータを集め、分析する仕組みが整いました。
例えば、
- NWDAF(Network Data Analytics Function): データ解析機能 (頭脳役のイメージ)
- DCCF(Data Collection Coordination Function): データ配達機能 (配達員役のイメージ)
NWDAFは、5Gシステム内のデータを収集し、AI/機械学習を用いて高度な分析・予測を行うコアネットワーク機能です。トラフィックの混雑状況や端末の挙動パターンを学習することで、将来のネットワーク状態を予測し、その予測をコアネットワーク内部で提供することができます。
DCCFは、そのNWDAFと連携し、効率的なデータ収集を実現する機能になります。
NWDAFの詳細については、以下の記事も参考になります。
5Gのデータ収集:必要な情報だけを受け取り、データを解析
はじめに、データ収集には、各ネットワーク機能がいま起きた出来事をコアネットワーク内の別のネットワーク機能に知らせることができる仕組みがあります。
例えば、
- 端末位置の変化、接続状態の変化
- PDUセッションの状態、QoS関連のイベント
- パケット遅延の状況
欲しい側(分析するNWDAFなど)は、この仕組みを利用して、必要なときだけ通知を受け取ります。道路情報アプリで、興味のあるエリアの通行止め情報だけの通知を受け取るのと同じイメージです。
この仕組みを利用することでNWDAFがデータ取得し、データ解析することが可能になります。また、データ収集の効率化を図りたい時には、DCCFを使用することで柔軟なデータ収集が可能となります。
DCCFによるデータ収集は、単なる“中継”ではありません。通知の重複を削減や効率化することができます。例えば、別のネットワーク機能からの重複要求を調整して配信数を削減することや、NWDAFへ通知する前に整形・加工して配信情報を要約することも可能です。
6Gではどう進化する?――”データフレームワーク”の時代へ
このように5Gでは、コアネットワーク内でのデータ収集や配信、データ解析の仕組みが議論されてきました。
これを発展させるために3GPPの6G議論ではユースケースや要求条件等が検討されており、効率的なデータ収集に関するユースケースが提案されています。
6Gでは、コアネットワークの枠を超えて共通のデータ収集や制御の仕組み(データフレームワーク)を構築することで、データ収集や転送のさらなる効率化と重複の排除や、データ量や通信速度が異なるデータ収集ユースケースへの対応、セキュリティの対応をめざします。
ユースケース例: AI推論・学習のための継続的データ収集
6G時代には、AIやSensing, Digital twinといった新技術が本格化することに伴い、扱うデータの量や種類も爆発的に増えると予測されます。特に、生成AIや大規模言語モデル(LLM)等、モデル更新とデータ需要が急増するサービスが一般化すると、データ収集の効率性がサービスの価値を左右します。
例えば、AIモデルの学習用データについて、無線のビーム管理に使用されるAIモデルでは、一つの学習用データサイズが大きくなることが予想されます。他にも、定期的に基地局やコアネットワーク内部で流れるデータは、モバイル通信を支えるAIモデルの学習データに活用できます。
しかし、すべてのデータを手当たりしだいに集めれば良いわけではなく、収集のしすぎはネットワークの混雑やコスト増につながってしまいます。
そこで6Gでは、コアネットワークに限らず端末や基地局などの場所から、どんなデータを、どのような形やどれくらいの頻度で、収集するかをうまく調整しながら、AIが必要とする“ちょうどよい”情報だけを届けるフレームワークが提供される予定です。
この効率的なデータ収集により、ネットワーク側がAIを使って自身を最適化していくことにつながります。例えば、ユーザの定期的な位置情報を基に通信頻度を調整したり、将来の通信の混雑を予測して無線リソースの分配を変えたり、通信品質を保つために通信トラフィックに関わる設定を切り替えたりすることにつながります。

データフレームワークの機能例
ユースケースに基づいて考えられるデータフレームワークの機能についての議論が始まっています。
例えば、
- 収集したデータを検索しやすくする機能(データの発見・登録)
- 効率的なデータの収集・転送
- データを適切に提供する公開機能
等があります。
他にも、データ収集に関するセキュリティ対策等の安心・安全の確保の検討が始まっています。
現在、ユースケース・要求条件を議論する検討フェーズは終わりに近づき、ソリューションを検討するフェーズが開始しており、どこの範囲まで議論するのか、どのような課題があるか、について検討が進んでおります。
まとめ
5Gでは、データ収集の仕組みにより、多様なデータをまとめて収集し、重複要求を調整して効率化し、配信前に整形・加工して最適化が可能になりました。そのおかげで、コアネットワーク内部は必要なときに、必要なだけ、必要な形でデータを届けられます。
6G時代には、この考え方をさらに広げ、安全で柔軟な仕組みを作るために、国際標準化でデータフレームワークの議論が進んでいます。
本ブログでは引き続き、標準化の最前線でどのような議論が行われているのか、その最新動向を随時発信していきます。次世代通信の形がどう作られていくのか、今後の情報展開にぜひご期待ください!