はじめに
こんにちは、NTTドコモ 6Gテック部の久米です。
最近のテクノロジーの進化はすごいスピードですよね。スマートフォンが普及して、インターネットが生活の一部になっている今でも、5Gのネットワークにはまだ解決すべき課題が残っているんです。そこで、「6G」という次世代のネットワークがどのように問題を解決して、どんな新しい価値をもたらすのか。ドコモがめざしている6Gの意義をご紹介します。
- はじめに
- 6Gの意義
- 1. Sustainability
- 2. Efficiency
- 3. Customer Experience
- 4. NW for AI
- 5. Connectivity Everywhere
- まとめ
6Gの意義
まずは「6Gって何がすごいの?」という疑問があるかと思うので、下の表をご覧ください。これがドコモが6Gの実現に向けてめざしている6Gの意義です!
展示会のドコモブースであったり、講演を聞いたことがある方は見覚えがあるかもしれません。
こちらの動画でも説明しているので是非ご覧ください。
それでは、簡単にですが紹介していきます。
1. Sustainability
地球温暖化が環境に与える影響は深刻で、温室効果ガスの削減が必要だと言われ続けています。 ドコモでも、CO2の削減に取り組み、2030年までにカーボンニュートラル、2040年にはネットゼロをめざしています (ドコモのサステナビリティの取組みについて、詳しくはこちらをご覧ください)。
そこで6Gに向けて、ドコモではグリーンエネルギーの活用だけでなく、NTTと連携しながら光と電気を融合させた技術(IOWN APN)を活用し、データ転送にかかるエネルギーを大幅に削減する取組みを進めています。また、AIを使ってネットワークを制御し、電力消費を抑え通信インフラ全体のCO2排出量を大きく減らすことで、持続可能な未来に貢献しようとしています。一方で、AIをたくさん使うと逆に電力を消費し、CO2排出量が増える懸念もあります。なので、しっかりバランスを取りながら効率的にAIを活用していくことが大切だと考えています。
2. Efficiency
4Gから5Gへのマイグレーションにおいては、NSA(Non-Standalone)とSA(Standalone)の複数のマイグレーションパターンが存在しました。それによりマイグレーションパスが複雑化しました。 また、標準仕様で規定されたマイグレーションパターンは商用ネットワークには実装されなかったのも存在しました。 これを踏まえて6Gへのマイグレーションでは、シンプルかつ効率的なマイグレーション方法を検討していく必要があると考えています。
さらにAIを活用した運用の最適化なども検討していきます(AI for Network)。 AI活用により、ネットワークの効率向上、障害予測、セキュリティ強化、自動最適化をめざしています。
3. Customer Experience
ここでは、6G時代にお客さまにどんなことが体験いただけるかいくつか例を紹介します。
1つ目は、新しい形のコミュニケーションです。 ドコモではこれまでの文字や映像を使ったコミュニケーションの枠を超えて、新しい形のコミュニケーションへ進化させようと検討しています。 たとえば、視覚や聴覚だけでなく、触覚共有などの五感の伝達によるコミュニケーションの実現に向けて研究開発をしています。 「触覚共有?」、「五感の伝達?」と気になった方は、こちらの記事でその技術である触覚共有技術「フィールテック®」について紹介されているので、ぜひ読んでみてください。
2つ目は、ネットワークでデバイスの計算処理を支援し、さまざまなサービスの快適な利用に貢献します。 6G時代には、ウェアラブルデバイスなどのユースケースが広まることが期待され、特にARやVRといった没入感のある新しい体験は今後ますます広まると考えられます。 6Gではデバイスの性能を最大限に引き出せるように、ネットワーク側で足りない計算リソースを補うことも議論しています。 これが実現するとユーザーは持っているデバイスの性能を気にすることなく、さまざまなサービスを快適に利用できることをめざします。
3つ目は、高精度測位による空間コンピューティングです。 6Gの高精度なセンシング技術は、数センチの誤差で位置情報を提供し、ARやVRの体験をさらにリアルにすることだけでなく、デジタルツインやロボットへの活用もできると考えています。
4つ目は、耐障害性の高いネットワークの提供です。 今やスマートフォンが日常生活に不可欠なものとなり、通信の安定性への期待もますます高まっています。 ドコモは通信の未来を見据え、より優れた安定性と耐障害性を持つネットワークの構築をめざし、どんな環境でも安定した通信ができるよう努めています。こちらは耐障害性を高めたネットワークを提案したときの様子です。 耐障害性を高めたネットワークにより、現代社会におけるあんしん感を提供し、スマートフォンやインターネットが当たり前に快適に使える世界をめざしています。
4. NW for AI
近年、AI技術は驚異的なスピードで進化を続け、さまざまな分野でその活用が広がっています。そして、ネットワーク分野でもAIを取り入れた検討がされ始めています。
ドコモが考える6Gの技術的中核は、「AI-Centric Network」です。
AI技術やロボットの進化により、これまでの人が中心だったユースケースに加え、AIやロボット中心のユースケースが増えていきます。こうした変化に対応し、AIや自動化がより大きな役割を果たすためには、強力なネットワーク環境が欠かせません。
AI-Centric NW(Network)の取組みは大きく分けて「AI for NW」と「NW for AI」の2つあります。
- AI for NWは、2. Efficiencyで触れていますのでここでは割愛します。
- NW for AIは、ネットワークがAIやロボットの機能を最大限に引き出せるよう、たとえばネットワークによる必要な計算リソースの提供や大量データの収集や加工およびネットワークの高速大容量、低遅延性と信頼性の更なる向上などの実現をめざしています。 これによって、リアルタイムで大量のデータの処理やフィードバックが可能となることで、AIの学習や推論がより効率的に行われ、スマートなサービスを提供できる環境が整います。 NW for AIについては、10月11日のdocomo EVERYDAYで詳しく紹介されているので、読んでみてください。
6Gは、これらの技術によって通信品質と効率を大きく向上させ、AIやロボットがより高度な操作を実現できるようにし、新たなビジネスモデルや収益源の創出を支える基盤になると考えています。また、人口減少という大きな課題に対しても、AIやロボット、自動化により、人手不足を補い効率を高めるだけでなく、産業全体を支える重要な役割を果たすことが期待されています。 ドコモでは、AIや自動化がこれからの社会でさらに重要な役割を果たせるよう、強力な6Gネットワーク環境を提供し、新しい可能性を広げられるようめざしています。
5. Connectivity Everywhere
これが、いわゆる「カバレッジ拡張」と呼ばれるもので、どんな場所でもインターネットにつながることです。 今や私たちの生活は、いつでもどこでもインターネットにつながることが当たり前のように感じます。しかし実際には、まだ通信が届かないエリアや、自然災害による通信障害が存在しています。そこでNTN(Non-Terrestrial Network)技術を活用することで、どんな場所にいても、途切れることなくつながり続ける通信環境を実現しようとしています。 具体的には、LEO(低軌道衛星)やGEO(静止軌道衛星)、HAPS(高高度プラットフォームシステム)を組み合わせることで、これまで通信が困難だった地域にも安定した接続を提供できるよう検討しています。 この技術によって、これまでの通信エリアではカバーしきれなかった場所にも信頼性の高い通信を提供し、つながるあんしん感を広げていきます。
このような技術の進化により、私たちの日常生活やビジネスがもっとスムーズになり便利で快適になっていくでしょう。
まとめ
ここまで、ドコモが考える6Gの意義についてお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?
ドコモでは、これらを実現すべく研究開発と標準化を推進し、6Gネットワークが次世代の通信インフラとして、持続可能で革新的な社会を実現するために欠かせない基盤となるように取り組んでいきます。