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生成AIを「知る」から「使う」へ。ドコモ社内の生成AI活用を加速させる「GenAI講師コミュニティ」の挑戦

みなさんこんにちは!NTTドコモ サービスイノベーション部の森木銀河と申します!

ドコモ社内では生成AI研修を実施しても、社員の業務に活かされない場合があること、「知っている」と「使っている」の間にある大きな壁を乗り越えられないことが大きな課題でした。生成AIの学びを社員の行動変容、そして価値創出へとつなぐために、私たちサービスイノベーション部は現場の有志社員が主役となって生成AIを教え、学び合うコミュニティ、「GenAI講師コミュニティ」を発足しました。本記事では、開始からわずか半年で社内に生成AI活用の大きなうねりを生み出した取り組みの裏側をご紹介します。

現場社員が主役!「GenAI講師コミュニティ」とは?

私たちサービスイノベーション部は生成AI活用のための研修や情報の提供だけでは、社員の具体的なアクション・価値創出に繋がりにくいという課題に直面しておりました。生成AIの基礎や可能性を「知る」段階から、業務で「踏み出す」段階へと、どうすれば多くの社員の背中を押せるのか。その解決策の一つが、現場でAI活用を自ら楽しみ、業務に使えるユースケースを試行錯誤し、その知見を周囲に広めたいという意欲を持つ社員が実施する勉強会だと考えました。

そこで、自主的に生成AIを扱う勉強会を企画・登壇することで、社内/自組織の生成AI活用を推進するリーダー人材、「GenAI講師」を募集・育成するプロジェクトを発足しました。

この仕組みの大きな特徴は、主役はあくまでGenAI講師自身であり、私たちは伴走者に徹している点です。GenAI講師が自身の組織の課題やニーズに合わせて勉強会を企画・実践し、サービスイノベーション部が事務局の役割を果たし、効果を検証するまでの一連のプロセスを全面的に支援しています。

  • 勉強会に使用できるアセット・テンプレート資料の提供
  • 勉強会資料の全社展開
  • GenAI講師向け相談会の実施
  • 事後アンケートの提供と分析

GenAI講師が登壇した関連イベント

GenAI講師が社内外へ登壇した関連イベントをご紹介します。2025年8月29日、GenAI講師が全社員に向けて勉強会を発信する全社横断型イベント「+AI Connect 2025」を開催しました。

GenAI講師が生成AI活用のリアルを伝える勉強会は大変好評であり、延べ2518名の社員が参加しました。

2025年9月25日、ドコモはGoogle Cloudとの共催で、ドコモグループ社員を対象とした大規模な生成AIイベント「+AI Prism」を渋谷ストリームのGoogleオフィスにて開催しました。

本イベントの午前中にGenAI講師が自ら企画・登壇したワークショップを2件実施しています。詳細は以下の記事もご参照ください。

nttdocomo-developers.jp

半年で約6000名が参加!ドコモ社内の生成AI勉強会の振り返り

GenAI講師コミュニティの活動は社内から大きな反響を呼び、2025年4月時点で70名を超える社員にエントリーいただきました。その後6月~9月(2025年度上期)にかけて、生成AI活用を推進する40件の勉強会が各組織で開催され、延べ参加者数は5,739名に達しました。

勉強会に参加した社員からは「自担当業務に活用できそうな内容が多くあり役立った」という新たな学びが得られた、また「資料作成やコーディングなどによる生産性向上」「資料作成の際の自分の伝えたいことを上手く表現できない場合等に作ってもらってみる」といった学びを踏まえたアクションを目指す声を多くいただきました。

今回重視した点は、単なる勉強会の開催数や参加者数に留まらない、参加者が「学んで終わり」になることなく職場での実践へと繋がる「行動変容」です。

そのため、勉強会後のアンケートでは、「業務との関連度」「有用度」「自己効力感」といった項目で平均スコア4.0以上という高い目標を設定しました。これは、研修直後アンケートによって「関連度」「有用度」「自己効力感」の3問の平均値が高くなるほど、研修転移する可能性が(職場に戻ってからの実践度)高まる※ことを示す指標です。GenAI講師が企画・登壇した勉強会のほとんどが上記平均スコア4.0という高い基準をクリアしており、勉強会の参加者が行動に移せた可能性は高いと考えられます。 *1

しかし社内で展開している対話型AIサービスのログを分析した結果、「勉強会前からある程度生成AIを使っていたユーザー層」は勉強会後の使用頻度が上がる傾向にある一方で、「勉強会前から生成AIを使っていないユーザー層」は勉強会後も使用頻度があまり変わらないことが明らかになりました。つまり勉強会に参加してもなお生成AIの活用に踏み出せていないケースが多数存在することが分かりました。また、上期のGenAI講師コミュニティ参加者に対するアンケート結果より、GenAI講師が置かれている状況や使用ツールが多様であるため、「GenAI講師の活動を支援するサポート体制の最適化が必要であること」という二つの課題も見えてきました。

これらの課題から、二つの仮説を立てました。 一つ目は、生成AIの活用に至らなかった社員層に対しては「対話型AIをそのまま使うのではなく、業務に特化したアプリとして提供する方が、活用のハードルが下がりAIによる価値創出につながるのではないか」という仮説です。 二つ目は、講師サポートに関しては「講師の経験やニーズが多様化しているため、一律の支援ではなく、個々の状況に合わせたサポートが求められているのではないか」という仮説です。

今後の取り組みについて

2025年度下期は上述した仮説にもとづき、GenAI講師への最適化したサポートのために「サブワーキンググループ(サブWG)」制度を導入します。

まず生成AIの活用に至らなかった社員層へのアプローチとして、GenAI講師がLLM開発プラットフォームDifyを活用して業務アプリを開発することを支援する「DifyサブWG」を新設しました。GenAI講師が開発・提供したアプリを各組織に勉強会/ワークショップ形式で展開することで、未活用層が業務アプリを通じてAIの価値を体感する機会を創出し、全社的なAI活用の裾野を広げていきます。 また講師サポートの最適化のために、初めて勉強会を企画するGenAI講師を支援「講師デビューサブWG」や専門性を持つGenAI講師と課題を持つ組織をつなぐ「講師マッチングサブWG」も設け、生成AI活用を推進するGenAI講師一人ひとりの活動を強力に支援していきます。

まとめ

生成AIという強力なツール単体では価値を発揮しません。

私たちサービスイノベーション部は、AIをあくまで手段と捉え、いかにして社員一人ひとりの業務を成功に導くか、という点を重視します。そのために不可欠な存在が、現場の課題とAIの可能性を結びつける「GenAI講師」に他なりません。一方的な研修ではなく、現場を深く理解する講師が勉強会を行い、共に考えるからこそ、学びは「知る」から「使う」へとつながります。彼ら・組織のチェンジエージェントが社内の至る所で活動することこそが、ドコモが生成AIを活用できる組織へと進化するための鍵だと考えております。 GenAI講師コミュニティでは社員が生成AIを「知る」状態から「使う」状態へ踏み出す支援を続け、全社員が当たり前にAIを使いこなし、日々の業務から新たな価値を創造する未来を目指します。

*1:中原 淳・関根 雅泰・島村 公俊・林 博之 (2022). 『研修開発入門 「研修評価」の教科書: 「数字」と「物語」で経営・現場を変える』. ダイヤモンド社.における混合評価アプローチを採用