NTTドコモR&Dの技術ブログです。

フィールテック技術で切り拓く、新しいコミュニケーションの形


ドコモ開発者ブログ編集担当の早川です。本記事は昨年公開した社員インタビュー記事の第2弾になります。 今回は、綾瀬はるかさんのCMでお馴染みの触覚共有技術「フィールテック®」の共同研究開発に携わる慶應義塾大学の梅原さんとドコモの石川さんに、ここだけのぶっちゃけ話も含む熱い想いを聞いてきました!

(※撮影・取材は一般公開されていないドコモ本社内設備で実施しています。)


目次

プロフィール

ゲスト:梅原 路旦 (ウメハラ ロダン)さん

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科メディアデザイン専攻 Embodied Media所属 修士課程2年(※所属は取材日時点)

2019年に東京工業大学情報理工学院入学後、ビッグデータ解析、数理モデリングを専門とした研究に従事。 2023年に慶應義塾大学に進学後、触覚、XRを専門とした研究に従事。NTTドコモとの共同研究でバーチャルペットとの触覚コミュニケーションシステムを実装。


ゲスト:石川 博規 (イシカワ ヒロノリ)さん

博士(工学)
株式会社NTTドコモ 6Gネットワークイノベーション部、慶應義塾大学大学院 特任教授 (※所属は取材日時点)

2020年より 6Gに向けた実用化研究を担当し、フィールテック技術を推進。 2023年より 内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期 『バーチャルエコノミー拡大に向けた基盤技術・ルールの整備』を採択
https://www.docomo.ne.jp/corporate/anatatodocomo/changesociety/07


フィールテック®技術について

💡 フィールテック®技術とは?

「フィールテック®」は触れた感覚を写真のように記録し、他者へ共有できる技術です。触覚だけではなく、味覚や嗅覚といった言葉では伝えにくい情報も共有できるように開発が進められています。 詳しくは下記動画をご参照ください。

あなたと世界を変えていく。|フィールテック篇

あなたと世界を変えていく。 フィールテック技術解説篇


早川:本日はよろしくお願いいたします!早速ですが、フィールテック®技術ではどのような世界をめざしているのでしょうか。


石川:今まで文字や映像のやり取りでコミュニケーションを取ってきましたが、多様性の時代で相手のバックグラウンドが違う中、既存のツールでは限界が出てきました。 相手の状況などを考慮しなくても、自分が言いたいこと伝えたいことをネットワークの中で相手に合わせた形に変換して伝えられるような技術を開発しています。 例えば、ゴルフスクールなどで先生がフォームを教えたい時、先生も生徒もお互い意識せずに生徒の身体や技能に合わせてフォームを伝えられ、より直感的な理解ができるようになることをめざしています。

技術のポイントとしては、動きや感覚をデータ化して相手に合わせるように変換しているところです。 例えば、AさんからBさんへ何かを伝えるとき、Aさんのコツや感覚をそのままBさんへ伝えてもマッチしません。 手の長さや筋力や年齢、身体の動作や人それぞれの感覚を取得してデータベース化し、相手に合わせてマッチングさせ元のデータにかけ合わせる技術を使っています。

梅原:私はその中でもVR内でミックスド・リアリティ(複合現実)を実現するための技術開発を担当しており、 仮想空間内で、より直感的に触覚を介したコミュニケーションができるようなシステムをつくっています。


早川:新規性があってとても面白い技術ですね!今までの技術開発で、一番大変だったことは何ですか?

梅原:デバイスの形状を既存のものから改良するのが大変でした。 昨年度までは球状のデバイスでしたが、指先に振動子をつけたり手首に「皮膚せん断刺激」という皮膚をつねるような感覚を提示することができるデバイスに変更しました。 ヘッドマウントディスプレイのハンドトラッキングシステムを活用したのですが、デバイスを装着していると手が手として認識されないなどの問題があり、その改良を何度も重ねましたね。

  
デバイス改良前(左)と改良後(右)

石川:梅原さんには、今年のMWCにも登壇してデモを実施してもらいました。 初見の人やVRに慣れていない人がちゃんと理解し満足して帰ってもらうために、デモシナリオを何度も変えたのも大変でしたね。 ただ、目的があるとがんばれると思うし、実際にお客さまの前に立つっていうのはなかなかできない体験だったと思いますよ。

梅原:そうですね、実際に体験されるユーザのリアルな声を聞くことができて、開発者目線としてこういう風にシステムを改良しようとか、 こんな部分に面白さを感じてもらえるなどの発見があったので、良い経験になったのではないかと思います。

  
MWC2024でデモ対応中の梅原さん(左)とデモ画面(右)

大学と企業の共同研究について

早川:今回ドコモと共同研究をしてみて、どうでしたか?

梅原:普通の研究だと自己満足で終わってしまうことが多いですが、企業との共同研究だと実際に社会実装として体験していただく方に手に取ってもらうことが大事だと思います。 正直最初は不安でしたが、ただ研究するだけでは関わることのできない人たちと関わることで、新しい技術を身に付けたり新しい知見を得られることが多かったです。 今回のMWCまでの期間を通して、自身のスキルレベルアップも感じましたし、普通の学生では体験できない貴重な体験をさせていただく機会になりました。

石川:東大発ベンチャーの会社にジョインしてもらっているので、そのカルチャーも体験できたのかなと思います。 これからの時代は昔より動きが早いので、いろいろな人と話す中で企業としても若い人達の考え方を取り入れることができました。 自分が成長できたなと思うのは、学生に任せることは僕は今までなかなか勇気が無くてできなかったんですけど、今回は梅原くんに任せてみてやり切ることができたので良かったと思っています。 彼は自分自身で目標を持って、社会人と変わらない責任感でやり遂げてくれました。

梅原:僕自身も、やるからには最高のものをつくりたいという意志がありました。 企業だと求められるレベルが高いのでそのレベルに追いつくように努力したいと思って、全力で臨みました。


早川:学生さんや大学にとってもドコモにとっても、お互いに相乗効果があったんですね、素晴らしいです! 梅原さんは、石川さんに「今だから聞きたい!」みたいなこと、ありますか?

梅原:そうですね、ぶっちゃけ僕どうでしたか?(笑) まだどういうことができるのかもわからない学生に、どのような未来を見据えられたでしょうか?

石川:自分自身の考えを持ってくれていたのがすごく良かったですね。正解はあってないようなもので、どう考えているかを伝えてくれたから信頼できました。 「なんとなく、、」だと、結果出てもその後改善しようがないからね。あとは自分自身から逃げなかったのが重要で、最後までマイナスな発言をひとつも言わずにやり切ったのが素晴らしかったと思います。

梅原:僕自身、楽しい感情はずっと燃え続けていましたね。実は、博士課程に進みたいと思うきっかけにもなったんです。 これから先、もっと突き詰めていきたいと思っています。

石川:ここからが大変で、CMで表現されている内容との乖離をどう埋めていくか。今まではゼロから作っていく楽しさがありましたが、お客さまに各サービスで使っていただくために「つくっては壊し」の作業が始まるので、その泥臭さも学べるとより成長できると思います。 「無いよりあった方が良い」ではなく、お金を払ってくださる方々に1円でも多くのメリットを感じてもらえるようにしないといけないので、そのあたりを今後も学生さんたちと一緒に挑戦していきたいと思っています。 修了するとき単なる論文ではなくて、「こんなものを世の中に出しました!」っていう風にしたいですよね。

フィールテック®技術にかける想い

早川:ありがとうございます。最後に、この技術に携わる上でのお二人の想いを教えてください。

石川:言葉で上手く伝えることができないがために、損している人が山のようにいます。例えば、頭が良すぎるが故に、伝え方に苦労する人もいます。 マジョリティが優先される世界において、我々の技術を使ってその土俵を合わせていきたいですね。 それぞれが持っている良いところを掛け合わせて新しい文化をつくっていくことで、意思の疎通がより円滑にできてみんなが幸せになれるようにしたいなと思っています。

梅原:人と人とのコミュニケーションだけでなく、今回開発したようなVR空間の中にいる生き物やモノを介した触覚コミュニケーションは今後身近なものになっていくのかなと感じています。 ヘッドマウントディスプレイ等の普及によりVR空間上でのインタラクションができるようになってきた中で、 まだ足りていないのがやはり触覚の部分だと思っていて、それが世に普及した時に自分たちの開発したデバイスをたくさんの方々に使ってもらえるよう今後もアップデートを重ねながらつくり上げていきたいです。


早川:本日はお忙しい中、貴重なお話ありがとうございました! お二人がめざす世界を楽しみにしています!!


(取材日:2024/6/7)


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この記事の編集担当


インタビュアー:早川 愛

株式会社NTTドコモ サービスイノベーション部 社員 (※所属は取材日時点)

2015年にNTTドコモ新卒入社後、ネットワークトラフィックに関するデータ分析業務に従事。2019年~2022年には、ドコモの技術展示会docomo Open Houseの企画運営を担当。2022年より ドコモ開発者ブログ の編集担当に従事し、本取材記事の投稿を企画。

カメラマン:佐々木 祐理

株式会社NTTドコモ サービスイノベーション部 社員(※所属は取材日時点)

2020年にNTTドコモにキャリア採用で入社後、レコメンドを専門とした研究開発業務に従事。変革人材創出プログラム ドコモアカデミー の1期生。NTT初のメンタルヘルスについて語れる会社公認サークル ドコモメンタルヘルスラボ のFounder。