NTTドコモR&Dの技術ブログです。

Excelでやってはいけない11のこと

はじめに

この記事ではExcelでやると嫌がられる、「やってはいけない(いわゆるDON'Ts/DOs)」、をご紹介します。

いまさらドコモのエンジニアブログでExcel。。。?と思われる方もいらっしゃると思いますが、いやいや世の中にはまだまだ扱いづらいExcelが大量に氾濫していて、我々のDXを阻もうと暗躍しているのです。

ちなみに去年は下のような記事を書いてました。実は今回もテーマは同じ。去年は抽象的だったので今年は少し具体な話としてExcelの「やってはいけない」を書くことにしました。

nttdocomo-developers.jp

 

自己紹介

何者?

 改めてこの記事をお読みいただきありがとうございます。ドコモ サービスデザイン部でCiRCUSというシステムを担当している川谷です。

CiRCUSって何?

 実はWikipediaの記事になってたりするシステムです。「え?iモード。。?」と、Wikipediaの記事は情報が古いんです。。今もiモードのインターネット接続サービスやドコモのメールサービスに使用されていますが、今では役割が大きく増え、dアカウント認証やspモード/ahamo(ドコモのスマートフォン向けインターネット接続サービス)の一部を支えるシステムとして運用されています。

さて、バシバシ書いていきます。背景にある思いとかありますが、前回の記事みたく抽象的になっちゃうので後回しっ!

 

その1 セル結合をしてはいけない

有名なやつです。こういうのですね。

なんでやっちゃダメかというと。

まず、フィルタがおかしくなる。例えば川谷のタスクを絞り込みたいと思ったら。。。あら。おかしなことに。。。

次に、ピボットテーブルも使えなくなる。表を作ったらピボットテーブルで統計処理したくなりますよね?でもやってみると。。。あらら。。。フィルタとほぼ同じですね。

じゃあどうすりゃいいのかっていうと、単純に書き下せばいいだけです。そうすればフィルタもピボットテーブルも問題なく動きます。

 

亜種としてこういうのもよく見ます(工数のところ)。これももれなくフィルタとかピボットテーブルがうまく動かなくなるのでやめましょう。

 

その2 色だけで意味を表してはいけない

こういうのですね。

 

まず、色の意味が分からないですよね。例えば上の表(タスク管理)で言えば、グレーのタスクは終わったの?中止になったの?変更箇所を赤くしたり黄色くしたりする人もいますが一緒です。重要なタスクの管理だったりするとそういった誤解が事故を生みます。

統計処理もできません。セル結合に似てますね。フィルタはぎりぎり色フィルタがありますが、こんな場合は。。。?

 

ウソみたいだろ。。。グレーの2行、違う色なんだぜ。。。

 

この例ほどわかりにくいケースはめったにないと思いますが、現にExcelで塗りつぶす時、人によって微妙に違うグレーを使ってる、みたいなシートを見たことがある人は多いと思います。ほかの人が塗った色をいちいち確認して塗りつぶすのは面倒ですもんね。この手の、色塗りだけで意味を表現している表はもちろんピボットする時にも非常に困ります。

じゃあどうすればいいのか。色だけで意味を表さずに、意味を表すカラム(列)をちゃんと作りましょう。色は視認性を上げる補助的としてだけ使う(完了や中止の行が視覚的に見分けられるようにする)。条件付き書式で自動的に塗ってくれるようにすると親切ですね♪

 

その3 打消し線を使ってはいけない

「色だけで意味を表すな」とほぼ同じ。統計処理できない、フィルタかけられない、です。それ以上の説明は不要でしょう。

 

その4 表の「キー」を左に置きなさい

まぁ見てください。この表、なんか違和感ないですか?

 

この表はタスク管理をしている表ですが、この表を見る人は、それぞれのタスクについて状況だったり担当者、その他情報を見たくなる表のはず。

なんでこの表が読みづらいかというと、項目を探すときのポイントとなる「業務名」、つまり検索のキーが一番左にないからなんです。

こんな風にしたらどうでしょう。

さっき感じた違和感はなくなりませんか?

人は表を見る時、自然と左側から順番に情報を探します。そう書かれた表が一般的だからそうなれちゃってるだけなのかもですが。

なので、探すときのキーとなる項目を表の左に置くと使いやすい表に。元の表は「状況」が一番左に来てましたが、「状況」からタスクを探す人ってあんまりいないですよね。

未完了のタスクを探す、みたいなユースケースはあるかもですが、この表の「状況」は文章で書かれてますし検索のキーにはならないですよね。

 

その5 見た目のためにセルを分けてはいけない

こういうの。前出のセル結合に似て見えるかもですが、これ、セル結合してないんです。2番目の「設計書レビュ」のところにあるカーソルを見てください。

これ、なんでこんなことしてるのかというと、「状況」に複数行を書いていてそれをセルごとに分けたかったんですね。

これをやっちゃダメな理由はすでに書いたものと同じです。項目の数を数えたりしづらくなったり、ピボットテーブルがうまく動かなくなったりします。

 

その6 自由入力させてはいけない

これもよく見るパターンです。

なんでダメか。同じです。統計処理できなくなります。ピボットテーブルを作れば一目瞭然。ほら。。

自由入力にしたせいでみんな思い思いに入力しちゃうし、挙句に表記ゆれまで。。言わずもがなですが、入力規則を設定して入力を制限しましょう。

どうしても入力する選択肢を制限できない場合はしょうがないので「その他」を作って、「その他」の場合にだけ入力する自由記述欄を作りましょう。それでも統計処理は大分楽になるはずです。少なくとも表記ゆれはなくなるし。

 

その7 オブジェクトを書いてはいけない

こういうの。セル以外に情報を入れると途端に扱いにくくなります。

統計処理ができない、というのは毎度書いている理由。その他にもフィルタをかけると。。。

吹き出しが謎の存在に。。。

色塗り同様、補助的なものとして使う分にはギリギリありかもですが、できるだけやめましょう。

 

その8 コメントを使ってはいけない

これ。(最近Excelのコメントの見た目が変わりましたね)

以前よりレイアウトがよくなったので、純粋なメタ情報として使うならまだ使い道があるのかも。。だけど、書かれた内容はデータとして統計処理はできないので注意が必要。そして、コメントのポップアップが邪魔。。。

 

その9 小数点以下の桁はそろえなければいけない

大学生のころ研究室の先生に「これは理系の書く表じゃない」と怒られたことがあります。。w

表に縦に並んでる数字は桁数をそろえましょう。表を見た人は、ざっと一番大きいものや一番小さいものを探したり、頭の中で軽い集計をしたりすることがあるんですがこういう桁がバラバラな表は相当読みづらいです。

 

ほら、スッキリ。ぱっと見て一番大きい項目、「川谷」の工数の合計も概算なら頭の中でさっと暗算できるようになるでしょ?一番下に合計を付けてあげる気配りも大事ですね。

 

その10 1つのシートに複数の表を書いてはいけない

こんな感じですね。

まずこれをやるとフィルタが一方にしか使えません。そして、上側の表が育つと下の表がスクロールしないと見えなくなって存在に気づかれなくなったり、行がどんどんずれていってよからぬことが起きたり。

無難に別のシートに分けましょう。

その11 単位を「文字列」で書いてはいけない

これはさすがにあんまり見ることはありませんが念のため。

まぁ、合計の行を見てもらえばわかりますが、単位を直接文字列で入力してしまうと数字を含めてセルの中身が丸ごと文字列型になってしまいます。なので合計値の計算はできない。「川谷」と「太郎」の合計は?というのと一緒ですね。(counta関数で数を数えることはできますが)

無難なのはこれ。単位はヘッダとかに書いちゃう。

ユーザー定義の表示形式で単位を入れるって手もあります。

↑みたいにすると

↑こんな感じに表示できるようになる。まぁ、ここまで手間をかける必要はない気もするのでヘッダに書いちゃうのが楽でいいですね。

 

まとめ

この記事に込めた想いのようなもの

去年の記事で、ドキュメントの構造化の話を書きました。その際にこんなチャートを載せていました。

このチャートは、川谷の主観で左に行けば行くほど構造化されておらず、右に行くほど構造化されているドキュメント形式だよ、というのを表しています。Excelはちょうど分水嶺あたり。

この分水嶺にあるExcelの使い方がまずいせいで非構造化ドキュメントに寄ったExcelファイルを作ってしまっている人が多いので、注意喚起として今回の記事を執筆しました。

でもExcelはあまり。。

こんな記事を書いていますが、筆者の川谷は何を隠そうExcelはあまり好きではないですw

頑張れば構造化ができなくはないExcelですが、Excel自体は非構造ドキュメントの量産を助長するかのようになんでもかけてしまうツールだからです。「色フィルター」なんかが最たる例かと思いますが、非構造ドキュメントを作ってもそれとなく動くような中途半端な機能が存在しているところがさらにこの記事で取り上げたような、扱いづらいExcel量産を助長している気がするのです。

まぁ、そもそもExcelはVBA以外では二次加工がしづらいですし、ファイルとして流通してしまうので最新版がどれかわからなくなったり、流通先で加工されてブランチが出回ってしまったりするし。また、WYSWYGな雰囲気を醸し出すツールだからこそ神Excelみたいなものが話題になるんだろうなぁとかとか。(大分偏見入ってますw)

終わりに

と、Excelはあまり好きじゃないと書いたものの実際には私も日々Excelを触ることは多いですし、多くの企業でいまだメインツールの一つとして使われているツールといっても過言ではないでしょう。

そんな、日々の業務で使うツールだからこそ、ちょっと使い方を改善するだけで生産性に大きな影響を与えるかもしれません。本記事が皆様の職場の生産性向上の一助になれば幸いです。