NTTドコモR&Dの技術ブログです。

将来の通信技術-6Gを身近に感じてもらうために-

はじめに

こんにちは、ドコモ6Gテック部の宮地です。 2002年ドコモに入社して、無線インフラに関する研究~事業部~現場などのさまざまな業務を経験し、現在は6Gテック部のプロモーション活動などに従事しています。 本記事では、神奈川県横須賀のドコモR&Dセンタの6G展示についてご紹介します。

6G展示の概要

 ドコモでは、「6Gホワイトペーパー(2022年11月に公表)」、「6G」がもたらす意義をもとに、6G時代に向けた研究開発に取り組んでいます。

6Gを推進する意義

 6Gは2030年頃の実現に向けて、移動体通信技術の共通規格を策定する3GPPでの標準化提案や多くの技術実証を通じて、6Gでの新たな価値の創造にむけた研究開発活動を進めています。
 そして多くの方に、「6Gを身近に感じていただきたい」という思いから、ドコモR&Dセンタ内に6G技術の一部を展示しています。
 今回は、2025年3月時点の展示物をご紹介します。

6G展示の内容

6G常設展示の展示内容は先ほどの6Gの意義で定義された検討領域に分類することができます。検討領域ごとに展示をご紹介します。

1.『6G』×『AI』 - AI中心の世界実現 -

2030年頃にはAIやロボットが当たり前に利用する社会が想像されます。これらに対して無線の通信環境を構築する際に、最適な通信方法を確立できるように、AIがインフラの機能を最適化する、AIやロボットのパフォーマンスを最大限引き出すインフラを提供する、そんな世界観をめざしています。

『AI for Network』&『Network for AI』

NW for AIに関しては、「お客さまにどんな価値観が提供できるか?」、ということを体感できるコンテンツもいずれ鋭意準備を進めていますので、乞うご期待ください。

AI for NWに関しては、「AI-AI(AI-Air Interface)」と呼ばれる研究を行っています。これは、電波伝搬環境に応じたインタフェース変調方式を設計し、無線インタフェースへ適用することで通信性能を改善します。また、通信機器と基地局における送受信機間の電波伝搬チャネル推定の信号が、AIを用いることで不要となり高い伝送効率が達成できるようになります。

2.『6G』×『CX』 - お客さまに新しい価値を提供 -

今までにない技術をもとに、カスタマーエクスペリエンス(お客さまへの新たな体験とそこから生じる価値)を体感していただきたいと思います。

  • 無線センシング
    従来型のセンサを用いずとも、インフラが発する電波の計測により、測位などのセンシングを行うというものです。将来的にはセンサのない世界観も実現できると期待しています。

  • In-Network Computing
    端末の処理負荷を軽減するため、ネットワーク側で補助を行い、端末、ネットワークの処理能力を最適に提供していきます。

In-Network Computing 展示

3.『6G』×『NW for Everywhere』 -海・空・宇宙の通信の確立-

海・空・宇宙あらゆるところでつながる世界を実現する技術をNon Terrestrial Network(以下、NTN技術)として多様な取組みを続けています。

  • HAPS(High Altitude Platform Station)
    高度約20㎞の成層圏を飛行するHAPSを中継点として、地上のLTE通信設備とお客さまのスマホとつなげる技術となります。HAPSは現時点ではグローバルにおいて実用化には至っていません。実用化に向けた道のりでは、通信性能評価が不可欠です。そのため、シミュレータによる機体性能評価・他の飛行体を用いた実証、さらには海外での飛行試験などに取り組んでいます。

HAPS模型

  • 海中音響通信技術
    深さ300m未満の浅海域は、波の影響や地形の影響などで通信が難しい領域とされていました。その海域で、音響とMIMO技術を用いて、信号処理を行うことで、1Mbpsの通信を実現しました。この技術は、浅海域での海底ケーブルの点検や、漁業などの分野での活躍が期待されています。

海中音響通信技術展示

4.『6G』×『NW for Everywhere』-高い周波数の安定した接続

6Gでこれまでよりも高い周波数帯を活用することが期待されます。高周波数帯はその電波の直進性の強さから、伝搬しにくいため遮蔽環境に弱いという特徴があります。そのため、エリア構築技術・通信改善技術の検証を行い、つながりやすさの向上にむけた3つの取組みをしています。

  • 多くのアンテナを設置する技術:分散MIMO
    複数のアンテナを使って通信を行う技術で、アンテナが異なる場所に配置されていることで、信号の干渉を減らし、通信速度や品質を向上させることができます。

分散MIMOの取組み

  • 新しい電波発射方法:つまむアンテナ
    つまむアンテナは誘電体導波路という高周波数帯用の電線を別誘電体でつまむと、つまんだ場所から電波が発射されるという面白いアイディアから生まれたものです。電線を別誘電体で”つまむ”または電線から別誘電体を”外す”ことでエリア化・非エリア化を切り替えられるため、必要なところのみに電波を届けるなど、効率の良いNWの実現に寄与できると想定しています。

つまむアンテナ

  • 電波の透過反射現象の活用:透過型メタサーフェス・RIS など
    透過・反射という現象は、電力そのものを使わないため、壁材を工夫することによってさらなるエリア改善に取組めないか検討しています。

透過型メタサーフェス

5.『6G』-より高い周波数の活用-

超高速通信を実現するには、どうしても電波資源が必要となります。ただ、電波資源には限りがあり、現在100GHz以上の超高周波数帯の利用が期待されています。 そこで、我々は、電波のとび方の解明や具体的な伝送性能の評価などに取組んでいます。

  • 電波伝搬評価
    電波は多数の場所に当たって反射などを繰り返しながら受信されます。受信される波の振る舞いは非常に複雑です。その電波のふるまいを解明する取組みとして電波伝搬方法の評価を実施しています。

  • 伝送性能評価
    ドコモが保有する技術を組み合わせて140GHz帯でデータを送信した時の通信性能評価を実施しています。現在は写真にある機材を使って、100Gbps通信を100mの距離で実現することができています。今後は器材の小型化を進めるなど実用化に向けて検討を進める予定です。

伝送性能評価展示

最後に

6G展示内容を一部ご紹介してきましたが、いかがでしょうか? 私たちは、6G技術開発の取組みをみなさまに体感いただく場所として展示を用意しています。社外の各企業のみなさまと見学を通じての議論から協創へつなげたいと思っています。
また、本展示は、横須賀市の小中学生や他府県の高等専門学校生、さらにはイノベーションデーにて横須賀市民の方にご覧いただきました。
このような営みを通じて、協創のきっかけとなる場を作るとともに、お子さまや学生のみなさまの技術との接点となり、将来の科学技術分野で活躍できる人材作りに少しでも貢献できましたら幸いです。
ご一読いただきありがとうございました。