NTTドコモR&Dの技術ブログです。

ShowNet 2025 展示紹介 ~商用NWを活用した実証実験による​ShowNetへの貢献​~

はじめに

こんにちは、コアネットワークデザイン部の小原、奥田、宮本です。

株式会社NTTドコモ (以下、ドコモ) は、「Interop Tokyo 2025(会場:幕張メッセ、 会期:2025年6月11日〜13日)」において構築される、世界最大級のイベントネットワーク ShowNet *1 に対して、AWS Region に構築した5G コアネットワーク(以下、5GC)とパケットを処理するUPF *2 を提供し、 実際の商用網と接続することで映像伝送を実施しました。

今年度のテーマ: 🎯 「ShowNet初!キャリア5G連携への挑戦」 というチャレンジにおいて、以下の3つの技術的取り組みを中心に展示しています。

  1. 幕張メッセへのエッジUPFブレイクアウト
  2. 5G閉域サービスによるセキュア高信頼なラストワンマイル提供
  3. キャリア5Gによるイベント会場映像伝送検証

この記事では、上記取り組みのうちのコアネットワークデザイン部5Gコア担当のコントリビューション部分である1を実現するにあたり我々で取り組んだ内容をご紹介します! 同部署のNWAPI担当のコントリビューションに関わる2,3の内容については、 こちらをご覧ください。

専用ハードウェアから仮想化を経てクラウドへ

ドコモでは、3G~4G初期に使われていた専用ハードウェアから、VMベース仮想化を経て、コンテナベース仮想化へと進化してきました。 そして、2022年以降では、5G時代に求められるネットワークの柔軟な配備や信頼性の実現を目指して パブリッククラウド上の 5GC と自社の仮想化基盤上に構築した既存の 5GC とを接続した ハイブリッドクラウド構成を動作させる検証に2022年から取り組んでいます *3

AI × GitOpsで実現する次世代5GCプロビジョニング

上述のようにドコモでは5GCのクラウドシフトを強力に推進してきました。5GCではコンテナ技術が主流で、オンプレミスやパブリッククラウドを問わずKubernetes上での展開が可能です。このようにオンプレ・クラウド両方つまりハイブリッドクラウド構成にてGitOpsを活用し複数の基盤に統一的なアーキテクチャで5GCをデプロイする取り組み進めてきました *4

GitOpsを用いた統一的なアーキテクチャ
今回は商用に接続する5GCにおけるSession Management Function(以下、SMF)の構築において、Gitlab及びArgoCDを用いで構成管理し、局の構築、パラメータチューニング、5GCコンフィギュレーションデータ投入等で活用しました。また、運用時にはLLMを用いたオペレーション自動化を実施しております。
LLMを用いた5GCオペレーション自動化の構成図
この内容は、Interop Tokyo 2025の展示会場内セミナー *5 にてご紹介しております。

また、NTTコミュニケーションズさんの開発者ブログにてAI活用の部分の詳細について紹介してもらっているので、こちらもご覧ください。

デジタルツイン環境における1call試験

今回の商用環境に接続する5GCのSMFについてはデジタルツイン *6 となるSMFをAWS上に構築し、キーサイト・テクノロジー社様のLoadCoreという擬似シミュレータによって事前の1call試験を行う取り組みを実施しました。試験の際にはAWS上のLoadCore実行用基盤構築をドコモで実施し、キーサイトテクノロジー社提供の試験シナリオをデジタルツイン環境向けに調整したうえで試験実施すること効率的に試験完了しました。キーサイトテクノロジー社様、ご協力いただきありがとうございました。

デジタルツイン環境における1call試験の構成図

dUPFの商用網接続による映像伝送

キャリア5Gの提供においては、NTT ネットワークサービスシステム研究所 (以下、NS研) で研究開発している DPU offloaded dUPF(以下、dUPF) *7 をエッジUPFとして幕張に設置し、商用環境で動作する5GC/gNBと接続することで、大容量・低遅延な5G SA回線をShowNetに提供しました。

今後は、TCP最適化やDPIなどの付加価値機能の実装・検証を進め、次世代データプレーンアーキテクチャとしての実証を継続する予定です。

dUPFを用いたShowNetの構成図

得られた知見・課題など

  • AI × GitOpsを活用した、様々な環境やコンポーネントを統一的に管理できるアーキテクチャをベースに5GCの構築を行うことで、5GCのコンフィグ確認や新規コンフィグ追加で有用性が見られました。今後はAIのチューニングによる正確性の向上やAIによる自動構築に取り組んでいきます。
  • デジタルツイン環境を構築することで商用環境の品質担保ができますが、試験機側で"FQDNのアドレス解決用の基盤設計"、"製品由来のAPI Prefixの設定"、" 擬似シミュレータでの試験シナリオの実行順序"などの商用環境に合わせこむ細かな調整が必要なため、試験機側も商用局の値を参考に構築できるようなIaCで高度化をしていく必要がありそうです。
  • 商用及び検証共にUPFの繋ぎ込みにおけるPFCPの各信号のパラメータ調整で非常に多くの時間を要しました。さらなるAI×GitOpsの高度化でオペレーションコストの削減を進めていきます。

おわりに

過去の本件に関わる技術や取り組みの内容は以下をご覧ください。

ドコモでは、本検証を通して得られた知見や成果を踏まえ、さらなるモバイルネットワークの発展のため研究開発を継続していきます。

*1:ShowNet: ShowNetは、 最新のネットワーク技術・ネットワーク機器などを相互に接続し、 「5年後、10年後に必要となるネットワークの姿」を示すというビジョンのもとに 構築するコンセプトネットワークです。 ShowNetは最先端のアーキテクチャを動態展示するネットワークでありながら、 同時に来場者や出展社にインターネット接続性を提供するネットワークでもあります。 ShowNet | Interop Tokyo 2025

*2:UPF:5GCネットワークのネットワーク機能の1つ。ユーザパケットのルーティング及び転送、パケット検査、QoS処理を担う機能。

*3:5GC on AWS: 5GCをAWS上に構築する実証実験を2022年に開始

*4:國友宏一郎・宮本克真・奥田兼三・小原啓希・宮本晃希・清水裕介 "5Gコアにおけるデプロイメント・アーキテクチャとGitOpsの適用" 信学技報, vol. 124, no. 433, ICM2024-57, pp. 105-110, 2025年3月.

*5:Interop Tokyo 2025 展示会場内セミナー G2-07: 「AI × GitOpsで実現する次世代5GCプロビジョニング ~プロビジョニングにより実現されたShownetネットワークとの接続~」 06.12(木) 16:05-16:45 展示会場内RoomG

*6:Digital Twinとは現実世界から集めたデータを基にデジタルな仮想空間上に双子(ツイン)を構築し、さまざまなシミュレーションを行う技術である。総務省令和6年版情報通信白書

*7:NTT NS研が開発中のData Processing Unit(DPU)によって動作するUPFで、IOWNインクルーシブコア構想 の先行実装形態として開発されているものです。 6G Computing Architecture: Distributed, Software Defined Accelerated and AI-enabled