NTTドコモR&Dの技術ブログです。

3GPP SA2会合が福岡で開催されました

はじめに

こんにちは!6Gテック部 アーキテクチャ標準化担当の趙です。
今回は、2025年5月に日本で開催された「3GPP SA WG2」の会合に参加しました。その開催状況をご紹介いたします。
SA WG2(以下、SA2)の主な目的は3GPPシステム全体のアーキテクチャとサービスを開発することです。3GPPにおけるネットワークアーキテクチャの中心であり、システムの「設計士」として活躍するグループです。この文章では、SA2#169の会合状況を中心にご紹介いたします。特に6Gに向けたアーキテクチャの検討テーマにおける合意は大きな進展です。3GPPの説明や3GPP標準化担当の仕事の紹介について、以下のブログをご参照ください。

3GPPの副議長に当選した話 - ENGINEERING BLOG ドコモ開発者ブログ

3GPPの6G標準化がはじまりました - ENGINEERING BLOG ドコモ開発者ブログ

3GPP CT 取組み紹介:2025年5月 ブラチスラバ会合とともに - ENGINEERING BLOG ドコモ開発者ブログ

福岡での開催

今回は久しぶりの日本開催であり、福岡で行われました。SAの会合としては、コロナ後初の日本での会合となりました。外国企業のみなさまからは、「日本で開催されてうれしい!」といった喜びの声も多く聞かれました。私の標準化経験もまだ1年ほどでして、今回がはじめての日本国内での参加でした。

会合会場のエントランス

主催者として、各WGの歓迎の挨拶は通常、開催国の企業の代表者が行います。
今回の3GPPの全体設計を担当するSA2の「歓迎のスピーチ」は、フラグシップオペレーターとしてNTTドコモ 6Gテック部 アーキテクチャ標準化担当の磯部担当部長が実施しました。博多の歴史や観光、現地の食べ物から会合会場のゴミ分別の仕方まで、幅広く紹介しました。ちなみに、SA3とSA5とSA6の歓迎のスピーチも、ドコモの代表者によって行われました。

歓迎のスピーチ by 磯部担当部長

オンラインでの進捗

今回の会合では、これまで私が検討している課題であるアンビエントIoT(充電機能のないバッテリーレスデバイス、または手動で交換または再充電する必要のないエネルギー貯蔵機能を備えたデバイス)に関連する寄書を2件提出しました。 二つの寄書のうち、1件は他社の寄書に統合されました。もう1件の寄書は、アンビエントIoTにて使用する認証データの保存場所を明確化する提案であり、アンビエントIoT専用NFであるADM(Ambient IoT Data Management)に保存することの妥当性を強調しました。特に印象深かったのは、この提案に対して意外にも反論がほとんどなく、小さな修正を除いて、みんながこの結論を認めてくれたことです。私の経験では、1回の議論で合意される寄書は珍しいことです。統合された寄書も、関連会社ともに力を合わせて取組み、最終的に合意に至りました。これは、事前に各社との十分な議論を通じて他社との関係構築をできた成果と考えます。

6G に向けたアーキテクチャの検討テーマ合意

今回の会合で最も重要な進捗は、6G に向けたアーキテクチャの検討テーマが合意されたことです。この検討では、6Gモバイルネットワークのシステムアーキテクチャを定義することを目的とし、具体的には、6Gのためのシンプルで効率的な標準を作成すること、5G時代に多数あったオプションの数を最小限に抑え過剰な構成を避けること、6GにおけるAIの活用方法、6GにおけるUE・コアネットワーク・アプリケーションサーバーのコンピューティングに関する支援の検討などが行われます。

検討内容の目的は下記内容にて、合意されました

合意された6G に向けたアーキテクチャの検討テーマ(6G SID)の目的(S2-2506096)

検討内容はWork Task(WT)というものに分解されており、今回は下記の8つ(WT#1~WT#8)が合意されました。

Study on Architecture for 6G System (S2-2506096)

Work Task 内容
WT#1 全体的な6Gアーキテクチャの定義を検討
WT#2 6GSへの移行と前世代との相互運用性をサポートする方法を検討
WT#3 6GにおけるAIの使用を支援・活用する方法の検討
WT#4 3GPPアクセス上でのセンシングと通信の統合検討
WT#5 効率的でスケーラブルなデータ処理のためのデータフレームワークを検討
WT#6 UE、コアネットワーク、アプリケーションサーバーにおけるコンピューティングのサポートを検討
WT#7 NTNのための6G RATの支援とサービス継続性を検討
WT#8 6GにおけるセルラーIoTの支援を検討

全体を通して、合意に至るまでのプロセスでは、オンライン・オフライン両方で非常に活発な議論が行われました。最後には、参加者全員からモデレーターを務めた方に熱い拍手が送られました。

SA2 主会場

オフラインでの交流

オンラインセッションに加え、休憩時間や食事時間のオフラインでのコミュニケーションも非常に重要です。SA2ではオペレーター同士の交流を深めるために、毎回オペレーターディナーが開催されます。ディナーでは、開催国のメンバーがレストランを予約しますが、同僚の6Gテック部 アーキテクチャ標準化担当の野崎さんが30人以上の会合会場からディナー会場への引率、乾杯の音頭を取るなど大活躍しました。美味しい九州料理を味わいながら、各国のオペレーター代表者と話し合い、共通点を探ることができ、効果的な人脈づくりの手段となっています。

会場の博多のお菓子(休憩時間で提供されました)

おわりに

今回の福岡での会合は、技術検討の進展だけでなく、開催国の企業として、頼られる場面が多く、普段の会合より交流が増え、国際交流の重要性を再確認する場となりました。オンライン・オフラインともに多くの成果を上げ、特に6G に向けたアーキテクチャの検討テーマ(6G SID)の合意など、大きな進展がありました。今後の会合も、さらなる進捗が期待されます。未来の技術発展に向けて歩んでいきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。