こんにちは、ドコモ6Gテック部の菊池 大希(きくち たいき)です。2026年5月18日~22日に開催された3GPP SA2#175会合に参加しました。本記事では、全体的な6Gアーキテクチャの検討課題に関する解決策の具体化の進展状況と私の活動状況をご紹介します。
この記事でわかること
- 3GPP SA2#175における6Gアーキテクチャ検討の最新状況
- ネットワークスライシングの議論概要
- SA2#175会合にて私が行ったこと
※本記事は2026年6月現在の状況と個人の見解を反映したものであり、将来の展開を保証するものではありません。

はじめに
SA2#175会合は中国・大連で開催されました。大連は、三方を海で囲まれた港湾都市で、歴史的には西洋的な都市文化を背景に近代都市が形成され、独特の街並みを持つ経済・文化の中心地として知られています。SA2#175会合では、世界中から約300名の専門家が集まり、6Gアーキテクチャをはじめとする将来のモバイルシステムについて活発に議論が行われました。
3GPPやSA2の説明については、以下のドコモ開発者ブログもぜひご覧ください。
SA2#175会合の全体サマリ
6Gアーキテクチャ検討は、2025年11月のSA2#172会合において、主要な検討課題(=Key Issue)が整理・確定されました。詳細は以下の記事に記載されておりますのでぜひご確認ください。 nttdocomo-developers.jp
その後、SA2#173会合から、Key Issueに対して各社が解決策を持ち寄り、解決策を議論するフェーズが始まりました。 解決策を整理するために、前回のSA2#174会合では、類似した解決策ごとにグループ分けが行われました。SA2#175会合では、グループごとに解決策の共通している部分と異なる部分を明確にする文書の議論が行われ、多数の文章が合意されました。作成した文書により、解決策の比較作業を効率的に行うことができるようになります。
以上まとめると、6Gアーキテクチャ検討は、SA2#172会合からSA2#175会合にかけて、課題の決定から、課題に対する解決策の具体化に移行したといえます。

会合の結果は、TR 23.801-01 「Study on Architecture for 6G System; Stage 2」にまとめられており、どなたでも見ることができます。*1 ここでいうTRとは、6G仕様(=Technical Specifications)を策定する前段階として、6Gネットワークの課題や解決案を検討する技術報告書(=Technical Report)です。
ネットワークスライシング
私が対応した6GアーキテクチャのKey Issueの一つであるネットワークスライシングについて紹介します。ネットワークスライシングとは、物理ネットワークを仮想的に分割(スライシング)し、それぞれに異なる通信特性を提供する技術です*2。分割された仮想的なネットワークはスライスと呼ばれます。ネットワークスライシングは5Gにて導入された比較的新しい機能であり、6Gにおいても重要な検討項目となっています。
議論の一つが、「通信の通り道」に対して、どのようにスライスを割り当てるかという点です。現在は、5Gと同様に端末が適切なスライスを選択する方式と、新たにコアネットワーク側がスライスを選択する方式の2つが検討されています。
ネットワークスライシングの検討では、SA2#175会合にて合意された文書は一つのみでしたが、会合期間中に至る所で活発に議論が交わされ、各社の主張ポイント、衝突ポイントが明確になり、議論が大きく前進しました。最終的には時間切れで、多くの文書は延期となりましたが、今回の最終版をもとに次回の議論が始まるため、議論は着実に前進しているといえます。
私の活動:スライシングの他社議論
SA2#175会合では、ネットワークスライシングの項目に寄書を提出し議論しました。私たちの寄書は、同じグループに分類された他社の寄書に統合されました。統合された寄書は、当初は私たちの意図どおりになっておりませんでした。そこで、ドコモの考え方や意図が適切に反映されるよう、他社担当者と議論を重ねました。連日の議論の結果、他社担当者と認識合わせを行うことができ、双方が納得する内容とすることができました。
標準化活動の魅力の一つが、このように世界中の技術者と直接議論しながら合意形成を進められることです。技術力に加えて、説明力や交渉力、相手との信頼関係を構築する力が求められ、エンジニアとして大きく成長できる環境だと感じています。
また、上記活動に加えて、端末ベンダー、OSベンダー、ネットワーク機器ベンダーなど複数の企業と個別に議論を行い、それぞれの観点や実現したい機能について意見交換を行いました。特にOSベンダーとの議論では、直近でリリースされた新しいバージョンの機能に関して詳細な説明を受けることができ、有意義な情報交換を行うことができました。
今後の見通し
SA2では、6月に臨時の電子会合が開催されました。この電子会合では、SA2#175会合の検討内容をもとに、未決定事項の明確化を中心に議論が進められました。ネットワークスライシングの項目に関しても、SA2#175会合で延期された解決策に関する文書の議論が進み、この電子会合においてすべて合意されました。
SA2では引き続き、各解決策の手順等、より詳細な仕様の検討が進められていく見込みです。2027年3月を目標に、それら各解決策を比較検討し、結論を出していきます。2027年4月以降からは、6Gの正式な仕様を定めていくフェーズへと移っていきます。
まとめ
SA2#175会合では、6Gアーキテクチャにおける具体的な解決策の議論が進みました。ドコモは、引き続き、世界中の技術者と議論を重ね、日本、そして世界中の皆さんにとって価値のある6Gをめざし、仕様策定をリードしていきます。
本ブログでは引き続き、3GPP上の議論の進展や各技術項目の特集記事を発出予定ですので、ぜひご確認ください。